紅狼Ⅰ《レッドウルフ》
3話 犬、番犬になる。
俺はこの時、知る由もなかった。
自分が、この先とんでもない面倒事に巻き込まれるってことも。
零弥の本当の目的も。
大切な事の意味さえも。
……自分の過去に目をつぶって、逃げ続けている俺には何も、見えていなかったんだ。
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ーー次の日、午後4時少し前、
俺は言われたとおり理科室前の廊下に来ると、そこには既に零弥の姿があった。
「おっ、きたな」
俺を見て、少し嬉しそうに言う。
『なんなんだよ、一体』
「来ればわかる。いいから着いてこい」
『はぁ?』
一体何処に連れて行く気なのか。
スタスタ歩く奴の後ろを仕方なしに早足で着いていく。
……なんだ?
あっ、【燐龍】の仲間の元にでも連れて行く気か?
そういえば元々勧誘するつもりだったとかいってたしな。
でも、いるのか?
夕方だし、校舎に?
そもそもこんなぼっちゃん校にそんな不良ばっかいるもんなのか?
……でも総長いるしなぁ。
他にいてもおかしくないのか。
考えながら歩いていたら、ピタリと零弥の足が止まった。
「ワンコ、言葉使いに気をつけろよ」
一言、俺にそう告げる。
奴がドアノブをひねった部屋は、あまりに予想外の場所だった。
『生徒会役員室ぅ……?』