紅狼Ⅰ《レッドウルフ》
……てか、またか。
今日は豊漁だな。
……裏路地を歩くこと数十分。
エンカウントしたのは、さっきとは別の不良ズ。
「泣いてんのおじょうちゃん〜?」
「俺達とキモチ良いコトしようぜぇ〜」
「オラこっち向けよ!」
うわぁ。
これあかん奴だ。
三人組の不良に囲まれているのは、制服姿の小柄な女の子。
うつむいたまま、怖いのか、ひっくひっくと泣き声をもらしている。
……天誅決定。
胸クソ案件とみた。
取り込み中で全く気づかない不良ズをいいことに、俺は忍ぶことなくカツカツと、ブーツの足音を響かせて彼らに近づく。
「だめだよねぇ、おじょうちゃんがこんなところきちゃ。ここはイケないお兄さんの遊び場なんだよぉ?」
「ギャハハハハ!!」
『そうだよ〜?暗がりにはアブな〜い人がいるって、ショウガッコーで習ったでしょ、お兄さん方?』
不良ズの1人が俺を見て目を見開いたのより早く、思いっきり回し蹴りを放った。
「げふぁ」
情けない声を上げて吹っ飛ぶ不良。
『ざっこ』
弱い弱い。
地面に転がす姿はまるで芋虫のよう。
「……テメェ!!」
呆然と、その様子を眺めていた不良ナンバー2が逆上して殴りかかってくる。
それを、ひらりひらりとかわす。
『おっそ』
かすりもしないよ、こんな攻撃。
こいつにも一発くれてやろうか。
きっついやつを、一発ばかり。
パンチを繰り出そうと伸ばした不良ナンバー2の腕を掴んで素早く足を払う。
体制を崩した瞬間に突き飛ばしてやれば、盛大にすっ転んだ。
『逃げな』
俺の言葉にビクッと身体を震わせた女の子は、直ぐに理解したようで鞄を持つと脱兎の如く走りだし逃げた。
これで良し。
「てめぇ…紅狼!!やってくれたなクソがっ!!俺の獲物を…!!」
目を血走らせて怒鳴る不良3。
『キャンキャンうっせーよ、カス。いーからかかってこいや』
「てめぇにはなぁ……借りがあんだよ!この前ウチの総長が世話になったなぁ!?あ゛!?」
『ハァ?知らんし。何の事だよ』
「とぼけんじゃねぇ!!ウチのチームのヘッドの潰しといて、タダじゃおかねえ!!てめぇら!!ぶっ壊してやっぞ!!!」
その声に、路地裏からゾロゾロと出てきた、目をギラつかせた不良たち。
その手には、木刀、鉄パイプ、バット、ナイス、スタンガン……
ぁ゛ー……
これはちょっとヤバいかもしんない。