紅狼Ⅰ《レッドウルフ》
開けた場所に出たと同時、180度くるりと向きを変える。
広い壁を背にして、奴らの沸く通路を前に。
ダッダッダッダ
近づく足音。
――来る!
先手必勝。
一人目が広場に出る瞬間、全速力で斜めに翔る。
積まれた廃タイヤを踏み台に、コンクリート壁の側面、2段跳びで一人目の側面に空中から回し蹴りを叩きこむ。
「ぎゃっ!!」
カランッ
的が落とした鉄パイプをとっさに奪い、
続く二人目、三人目の武器を払い落とし、パイプを後方に投げ捨てた。
派手な音にひるむ隙を着いて、続く不良の武器を持つ手を蹴り上げる。
「クソッ!!」
「強えッ!!」
――初動はOK。
けど…
ズキッ!
『チッ』
唐突な右手の痛みに思わず顔をしかめる。
この怪我さえなければッ!
痛みに反応が遅れる。
リズムが崩れる。
倒しても倒しても沸く不良、
あと何人ーーッ
「そこだアッ!!」
バチッ!
『ッ…!』
一瞬の閃光と共に走る、衝撃。
瞬間力が抜け落ちた身体が、地面に崩れ落ちた。