夏の跡~君がくれた奇跡の歌~
親友の妹
「先輩の歌は、たくさんの人を幸せにできるって、信じてます!」
高三の頃。一人の少女に言われた言葉を忘れられないでいる。
親友の妹であり、愛する人だった彼女。
……だけど俺は、大切な人を幸せにすることができなかった。
「お邪魔しまーす!」
高2の春休み。俺は親友の正樹の家に泊まることになった。
先日、修了式の日に春休みの課題が多くだされ、終わらない予感がした俺は、学年一位の正樹に教えてもらうことにした。
渡辺 正樹(わたなべ まさき)。
正樹と出会ったのは、小学生の頃。
ヤンチャで、怒られてばっかの俺と真逆に、成績優秀でいろんな人から信頼されてた正樹とは、もちろん最初は話が合わなかった。
だけど、小学1年生の夏休み。
初めて、俺は正樹がキレているところを見た。
それは、きっと隣の子のためだろう。
正樹の横に、俺たちより幼い少女が立っていた。
「いいじゃーん、ちょっと遊ぼーって言っただけじゃん笑」
小学高学年らしき人物が四人、正樹と女の子を囲んでいた。
元々仲がよくないし、俺は優秀な正樹が嫌いだった。だから、見て見ぬふりをして、その場を去ろうとしたとき、
ドスッ
「うっ、」
鈍い音と共に、正樹のうなり声が聞こえた。とっさに振り向くと、男子の二人が正樹を交互に殴っている。
喧嘩をしたことがないのか、手も足も出ない正樹。
それを横で泣きながら見る少女を見て、とっさに走っていた。
「やめろ。」
俺は低い声で、四人に言う。
最初ビックリした様子だったが、すぐに鼻で笑い、俺に襲いかかってきた。
俺は一人目の拳を避けると、二人目の腹に拳を殴り付ける。
今度は一人目に、キックしてから、三人目と四人目にも、同じことをした。
俺が軽く殴っただけで、尻餅着いて動けなくなった四人は、泣きながらすぐに逃げていった。
喧嘩ばっかりしていた俺は、無傷で四人に勝利した。
後ろを振り替えると、血だらけの正樹が何度も頭を下げていた。
「助けてくれて、ありがとう。君がいなかったら、大変なことになってたよ。」
いつも冷静な正樹の、戸惑ったり泣いたりする顔を見るのは初めてだった。
……。お前も俺らと一緒だよな。
「別に、気にすんなよ。早く手当てしろよ」
「うん!」
この時、正樹に微笑まれた後、俺は純粋に笑った。
最初は嫌いだったけど、この事件の後、何となく話しているうちに、こいつは側にいて、楽しい。こいつのためなら、俺は何度でも戦える。そう、思った。
そして、小学1年生から、高校までずっと一緒にいるわけだ。
「夏目ー、荷物こっちー!」
案内されたのは、白と淡いブルーで統一された、清潔間のある正樹の部屋だった。
俺は隅っこに荷物を置くと、さっそく床に座り机に課題をだした。
「あー、めんどい。正樹俺の分もやってよ」
「こーいうのは、自分でやんないと!まあ、分からなかったら、ヒントくらいは教えてあげる!」
……。昔っから、同じ言葉ばっか。
自分でやらなきゃ意味がない。先生と同じ言葉を何回も言ってくる。
……。でも、正樹が誰よりも努力しているのを知っているせいか、すんなりと、受け入れる。
「わかったよー。」
俺たちは黙々と課題を進めていった。
途中分からないところは、正樹に解説してもらって、三時間ほどで課題の半分を終えた。
「はー、やっと半分かよ……。」
疲れた俺は机に顔を伏せながら、ふと正樹を見ると、もうすでに、課題を終わらせていた。
「……。相変わらず早いな、優秀は違うわ」
正樹は苦笑した後、
「さて、もう遅いし夕飯にしよっか笑」
課題を片付けて、ひとまず飯にすることにした。
階段を降りると、正樹のお母さんがキッチンで、俺たちの夕食を作ってくれていた。
机を見ると、ハンバーグとサラダが置かれていた。
「ご飯食べましょう!いっぱい食べてね!夏目くん!」
「いただきます!」
四人テーブルで、右の奥のイスに腰かける。隣に正樹が座り、俺の目の前は正樹のお母さんが座った。
「あれ、歌音、まだ帰ってきてないの?」
「呼んだから、もう少しで来ると思うわ!」
バタバタ
勢いよく階段を下りる音が聞こえた。
バン
「お兄ちゃんっ、夏目さんが来るってほんと!?」
「横にいるじゃん笑」
正樹が微笑むと、彼女は顔を赤らめながら、前髪をさわる。
「あっ、えっと、歌音(かのん)って言います!小さい頃から、夏目さんに憧れてました!」
……。小さい頃。
どっかで見たことのある面影。
記憶のなかで重なったのは、夏休みの時に横で泣いていた少女。
今は昔と変わって、目がぱっちりしていて、スタイルもよく、可愛い子と言うよりは、綺麗な子に成長していた。
「よろしく、歌音ちゃん笑」
「はい!」
その後、俺たちはご飯を食べながらいろんな話をし、夜は課題を終わらせ、あっという間に、次の日になっていた。
「お邪魔しましたー!」
軽く礼をしてから、家を出た。
相変わらず正樹は優秀で、お母さんは明るくて、歌音ちゃんは面白かった。
素敵な家族だった。
「夏目さん!」
透き通っている綺麗な声。
振り向くと、そこにいたのは、歌音ちゃんだった。
「ん?どーした?」
ほんのり頬を顔を赤らめ、緊張した顔で、小さく口を開いた。
「あのっ、連絡先教えてもらってもいいですかっ?///」
緊張していたから、ものすごいことを言うのかと思っていたが、案外普通でビックリした。
俺は自分の携帯をだして、赤外線で交換した。
「これでいいね、いつでも連絡してこいっ……」
ドキッ
俺は思わず、声を出しそうになった。
眩しいくらい綺麗な彼女の笑顔。
「ありがとうございます!さようなら!」
笑顔で走り去っていく彼女の後ろ姿を見えなくなるまで、ずっと見つめていた。
高2の春休み。
俺は親友の妹に特別な思いを抱いた。
高三の頃。一人の少女に言われた言葉を忘れられないでいる。
親友の妹であり、愛する人だった彼女。
……だけど俺は、大切な人を幸せにすることができなかった。
「お邪魔しまーす!」
高2の春休み。俺は親友の正樹の家に泊まることになった。
先日、修了式の日に春休みの課題が多くだされ、終わらない予感がした俺は、学年一位の正樹に教えてもらうことにした。
渡辺 正樹(わたなべ まさき)。
正樹と出会ったのは、小学生の頃。
ヤンチャで、怒られてばっかの俺と真逆に、成績優秀でいろんな人から信頼されてた正樹とは、もちろん最初は話が合わなかった。
だけど、小学1年生の夏休み。
初めて、俺は正樹がキレているところを見た。
それは、きっと隣の子のためだろう。
正樹の横に、俺たちより幼い少女が立っていた。
「いいじゃーん、ちょっと遊ぼーって言っただけじゃん笑」
小学高学年らしき人物が四人、正樹と女の子を囲んでいた。
元々仲がよくないし、俺は優秀な正樹が嫌いだった。だから、見て見ぬふりをして、その場を去ろうとしたとき、
ドスッ
「うっ、」
鈍い音と共に、正樹のうなり声が聞こえた。とっさに振り向くと、男子の二人が正樹を交互に殴っている。
喧嘩をしたことがないのか、手も足も出ない正樹。
それを横で泣きながら見る少女を見て、とっさに走っていた。
「やめろ。」
俺は低い声で、四人に言う。
最初ビックリした様子だったが、すぐに鼻で笑い、俺に襲いかかってきた。
俺は一人目の拳を避けると、二人目の腹に拳を殴り付ける。
今度は一人目に、キックしてから、三人目と四人目にも、同じことをした。
俺が軽く殴っただけで、尻餅着いて動けなくなった四人は、泣きながらすぐに逃げていった。
喧嘩ばっかりしていた俺は、無傷で四人に勝利した。
後ろを振り替えると、血だらけの正樹が何度も頭を下げていた。
「助けてくれて、ありがとう。君がいなかったら、大変なことになってたよ。」
いつも冷静な正樹の、戸惑ったり泣いたりする顔を見るのは初めてだった。
……。お前も俺らと一緒だよな。
「別に、気にすんなよ。早く手当てしろよ」
「うん!」
この時、正樹に微笑まれた後、俺は純粋に笑った。
最初は嫌いだったけど、この事件の後、何となく話しているうちに、こいつは側にいて、楽しい。こいつのためなら、俺は何度でも戦える。そう、思った。
そして、小学1年生から、高校までずっと一緒にいるわけだ。
「夏目ー、荷物こっちー!」
案内されたのは、白と淡いブルーで統一された、清潔間のある正樹の部屋だった。
俺は隅っこに荷物を置くと、さっそく床に座り机に課題をだした。
「あー、めんどい。正樹俺の分もやってよ」
「こーいうのは、自分でやんないと!まあ、分からなかったら、ヒントくらいは教えてあげる!」
……。昔っから、同じ言葉ばっか。
自分でやらなきゃ意味がない。先生と同じ言葉を何回も言ってくる。
……。でも、正樹が誰よりも努力しているのを知っているせいか、すんなりと、受け入れる。
「わかったよー。」
俺たちは黙々と課題を進めていった。
途中分からないところは、正樹に解説してもらって、三時間ほどで課題の半分を終えた。
「はー、やっと半分かよ……。」
疲れた俺は机に顔を伏せながら、ふと正樹を見ると、もうすでに、課題を終わらせていた。
「……。相変わらず早いな、優秀は違うわ」
正樹は苦笑した後、
「さて、もう遅いし夕飯にしよっか笑」
課題を片付けて、ひとまず飯にすることにした。
階段を降りると、正樹のお母さんがキッチンで、俺たちの夕食を作ってくれていた。
机を見ると、ハンバーグとサラダが置かれていた。
「ご飯食べましょう!いっぱい食べてね!夏目くん!」
「いただきます!」
四人テーブルで、右の奥のイスに腰かける。隣に正樹が座り、俺の目の前は正樹のお母さんが座った。
「あれ、歌音、まだ帰ってきてないの?」
「呼んだから、もう少しで来ると思うわ!」
バタバタ
勢いよく階段を下りる音が聞こえた。
バン
「お兄ちゃんっ、夏目さんが来るってほんと!?」
「横にいるじゃん笑」
正樹が微笑むと、彼女は顔を赤らめながら、前髪をさわる。
「あっ、えっと、歌音(かのん)って言います!小さい頃から、夏目さんに憧れてました!」
……。小さい頃。
どっかで見たことのある面影。
記憶のなかで重なったのは、夏休みの時に横で泣いていた少女。
今は昔と変わって、目がぱっちりしていて、スタイルもよく、可愛い子と言うよりは、綺麗な子に成長していた。
「よろしく、歌音ちゃん笑」
「はい!」
その後、俺たちはご飯を食べながらいろんな話をし、夜は課題を終わらせ、あっという間に、次の日になっていた。
「お邪魔しましたー!」
軽く礼をしてから、家を出た。
相変わらず正樹は優秀で、お母さんは明るくて、歌音ちゃんは面白かった。
素敵な家族だった。
「夏目さん!」
透き通っている綺麗な声。
振り向くと、そこにいたのは、歌音ちゃんだった。
「ん?どーした?」
ほんのり頬を顔を赤らめ、緊張した顔で、小さく口を開いた。
「あのっ、連絡先教えてもらってもいいですかっ?///」
緊張していたから、ものすごいことを言うのかと思っていたが、案外普通でビックリした。
俺は自分の携帯をだして、赤外線で交換した。
「これでいいね、いつでも連絡してこいっ……」
ドキッ
俺は思わず、声を出しそうになった。
眩しいくらい綺麗な彼女の笑顔。
「ありがとうございます!さようなら!」
笑顔で走り去っていく彼女の後ろ姿を見えなくなるまで、ずっと見つめていた。
高2の春休み。
俺は親友の妹に特別な思いを抱いた。