銀座のホステスには、秘密がある
殿の言ってる意味が一瞬分からなかった。

なんで?
なんで、そんなの聞きたいの?
殿にはたくさん女がいるんじゃないの?

3回くらい瞬きした。

「なんて顔してんだよ。おまえは俺のことが好きなんだろ?」
「え?なんで?」
「なんで、って何だよ」
「誰がそんなこと……」
「言われなくても分かるっちゅーの。まっつんと飲んでる時におまえ嫉妬して先に帰っただろ。あれから俺すげーまっつんに冷やかされたんだけど」
「ちがっ」
「違うって何だよ。違わないだろーが。違うのか?」
「でも、殿には、他にたくさん女の人が……」
「いないって。誰だよ。言ってみろよ。彩乃だったらさっき妹って宣言したばかりだからな。しかも彩乃はサラのことが好きって、俺の目の前で告白してったんだからな。誰だよ。下手なこと言ってると……」
「……痛っ」

殿がアタシの両肩に手をかけた瞬間、押し倒されていた。

この状況が理解できない。
殿の後ろにアタシの部屋の天井が見える。
何?どういうこと?

「言えよ」
「な、な、にを……」

殿が熱っぽい瞳で見つめてくるから、鼓動が激しくなる。
胸が痛い。

「おまえの口から聞きたい。誰に惚れてる?」

そんなに見つめられると、何も考えられなくなる。

「待って……」
「待たない」

殿の顔がどんどん近くなって、もう鼻の先が触れそう。

「ちょっ、だって……」
「なんだ?」
「だって、アタシじゃ、ダメでしょ?」
「ダメじゃない」

二人の鼻が触れ合った。

「殿。本気?」

殿の瞳が微かに微笑んだ。

「サラ、好きだ」

その瞬間、唇を奪われた。
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