銀座のホステスには、秘密がある
「完成!どう?」

鏡の中には綺麗に結い上げられたアタシ。
アップにされたヘアーが、気持ちを一瞬で銀座の女へと切り替えてくれる。

顔の両サイドに一束ずつ落とされた髪が儚げで……うん、アタシに似合ってる。

「素敵。さすがケンジさん」
ありがとう、と席を離れて、奥の個室で着替える。

ネックから胸元までレースで覆われたロイヤルブルーのドレス。
腰までピタリと身体のラインが出るようなほとんどオーダーメイドのお気に入り。

軽くコートを羽織って店内に戻ると数名がアタシに気付いて、足元から頭の先へと視線を動かしている。

「ありがとうございました」
アタシににっこり微笑むのは受付の女の子くらい。
「ありがとう」
軽く頭を下げて、エレベーターホールに向かう。

「怖い、怖い」
女たちの視線はあまり好きじゃない。

エレベーター前に、さっき入口にいたオレンジ色のドレスの娘がいた。

アタシに気付いてこっちをジッと見てる。
「……」
また口が開いている。

だけど、その視線は嫌いじゃない。

アタシが近付くとビクリと肩が揺れて、
「ど、どうぞ」
エレベーターのボタンを押して、アタシを待っててくれた。

「ありがとう」
「は、はい」

アタシと二人きりで緊張してるのが分かったから、
「そのドレス似合ってるわね」
思わず声を掛けてしまった。

「ありがとうございます!」

アタシのハスキーな声にも不思議がらずにその娘は答えた。
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