銀座のホステスには、秘密がある
「高っ!」
なんとなく分かってはいたけど、帯だけで軽く二十万はする。
それに、帯締め・帯揚げ・襦袢や足袋。その他諸々。
それに扇子まで揃えると……
「63万8500円になります」
「嘘……」
「そりゃ良いやつ選んだらそうなるわよ」
「でも、お正月だし……」
殿との同伴だし……
「……」
「何よ」
「どれを削ったらいい?」
「全部よ全部。もっと安いのにしたらいいのよ」
「でも……」
せっかくなら、良い物を着て殿の横に立ちたい。
「あー。もう!あんたって本当に顔だけね。頭を使いなさい。ちょっと小松さん」
龍太郎ママがお店の人に声をかける。
削るって言っても、どれも素敵な物ばかり。
どうせ揃えるのなら、ずっと使えるやつを、と思うと予算の3倍以上。
「はい。お待たせいたしました。お茶をお持ちしました」
品の良い初老のご婦人が奥のテーブルへお席を用意している。
そちらへ移動してお茶を頂くけど、頭の中はグルグルお金が回ってる。
「小松さん。この娘ね、これからお宅にお世話になると思うの。将来有望な娘なのよ。だから、少しまけてもらえないかしら」
「もちろんでございますよ。龍太郎様のご紹介ですもの。お勉強させてもらいます」
「いつも悪いわね。ほら、サラからもお願いしなさい」
「よろしくお願いします」
アタシも頭を下げると、小松さんはにっこり笑って、
「では、端数を落として……60万ではいかがでしょうか?」
アタシに聞いてきた。
だよね。
それくらいはするよね。
「小松さん。端数落とすって言ったら、50ちょうどくらいにしてもらわないと」
そう言ったのは、アタシじゃなくて、龍太郎ママ。
今日は洋服を着てて見慣れないから違和感があるけど、小さな扇子をパタパタさせてるのはいつもと同じスタイル。
「龍太郎様。それはちょっと……では、思い切って58万円。これならばいかがでございますか?」
「もう一声欲しいわね」
小さな扇子のパタパタが早くなってる。
「では、駆け引きなしの55万でお願いします。もうこれ以上は下げられません」
「小松さん。もう無理?」
「はい。もう無理でございます」
「ホント?」
龍太郎ママの大きい顔が小松さんに迫る。
絶対、アタシの為って言うより、値段交渉を楽しんでるよね?
「もう。龍太郎様にはかないません。では、こちらの簪(かんざし)をプレゼントで差し上げますので、そちらで手を打っていただけませんか?」
龍太郎ママがアタシの方を見て、
「それでいいわね?」
と聞いてくるから、肯くしかない。
小松さん。すみません。
なんとなく分かってはいたけど、帯だけで軽く二十万はする。
それに、帯締め・帯揚げ・襦袢や足袋。その他諸々。
それに扇子まで揃えると……
「63万8500円になります」
「嘘……」
「そりゃ良いやつ選んだらそうなるわよ」
「でも、お正月だし……」
殿との同伴だし……
「……」
「何よ」
「どれを削ったらいい?」
「全部よ全部。もっと安いのにしたらいいのよ」
「でも……」
せっかくなら、良い物を着て殿の横に立ちたい。
「あー。もう!あんたって本当に顔だけね。頭を使いなさい。ちょっと小松さん」
龍太郎ママがお店の人に声をかける。
削るって言っても、どれも素敵な物ばかり。
どうせ揃えるのなら、ずっと使えるやつを、と思うと予算の3倍以上。
「はい。お待たせいたしました。お茶をお持ちしました」
品の良い初老のご婦人が奥のテーブルへお席を用意している。
そちらへ移動してお茶を頂くけど、頭の中はグルグルお金が回ってる。
「小松さん。この娘ね、これからお宅にお世話になると思うの。将来有望な娘なのよ。だから、少しまけてもらえないかしら」
「もちろんでございますよ。龍太郎様のご紹介ですもの。お勉強させてもらいます」
「いつも悪いわね。ほら、サラからもお願いしなさい」
「よろしくお願いします」
アタシも頭を下げると、小松さんはにっこり笑って、
「では、端数を落として……60万ではいかがでしょうか?」
アタシに聞いてきた。
だよね。
それくらいはするよね。
「小松さん。端数落とすって言ったら、50ちょうどくらいにしてもらわないと」
そう言ったのは、アタシじゃなくて、龍太郎ママ。
今日は洋服を着てて見慣れないから違和感があるけど、小さな扇子をパタパタさせてるのはいつもと同じスタイル。
「龍太郎様。それはちょっと……では、思い切って58万円。これならばいかがでございますか?」
「もう一声欲しいわね」
小さな扇子のパタパタが早くなってる。
「では、駆け引きなしの55万でお願いします。もうこれ以上は下げられません」
「小松さん。もう無理?」
「はい。もう無理でございます」
「ホント?」
龍太郎ママの大きい顔が小松さんに迫る。
絶対、アタシの為って言うより、値段交渉を楽しんでるよね?
「もう。龍太郎様にはかないません。では、こちらの簪(かんざし)をプレゼントで差し上げますので、そちらで手を打っていただけませんか?」
龍太郎ママがアタシの方を見て、
「それでいいわね?」
と聞いてくるから、肯くしかない。
小松さん。すみません。