銀座のホステスには、秘密がある
ケンジさんのお店に行く前に荷物を置きにお店に寄ったら、樹里がローラママに着物を着つけてもらってるとこだった。

「すごっ。樹里。キレイ」

真紅の着物に金の帯。
絵柄がほとんんど入ってないから、
「ちょっとエッチっぽい」

「サラ。言葉が違うでしょ。こういうのはね艶やかって言うのよ」

ローラママにすぐ怒られた。

「いいでしょ?樹里は顔立ちが地味だから着る物で引き立てないとね」
あかねママは笑顔で言ってるけど、それってけなしてるよね?
そっと樹里の顔を見ると、苦笑いしてる。

「ママ。こんな着物持ってたんだ」
「若い頃のよ。いつだったかの誕生パーティの時に作ったの」
「樹里に似合ってるね」
「サラは、あかねママの若い頃を知らないのよ。この人の全盛期はすごかったんだから」

ローラママはいつもアタシを怒る。

「サラは?龍太郎ママにどんなの貰ったの?」
樹里が気を利かせて話題を変えてくれた。

「樹里と真反対。濃紺の着物に、下の方に白いユリが刺繍されてるの」
あまりにも濃い藍色だから、お店で着たら黒に見えるかもしれない。

「良い物、くれたわね」
ママの眉間にシワが寄ってる。

「そうなの?」
そんなに良い物とは知らなかった。
やっぱり着物は難しい。

「龍太郎ったら、サラを引き抜こうと思ってるのかしら」

「……」
「……」

「やだ。ママったら、アタシは女だからあっちのお店には行けないでしょ」
「あはは。冗談よ」

今、一瞬、シンとしたよね?
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