銀座のホステスには、秘密がある
次の瞬間、樹里と目が合った。

ハッとした樹里が、
「そうよ。あかねママ。もう何言ってんの」
あはは…と乾いた笑い方をする。
樹里が、こういう笑い方の時は、大抵嘘をついてる。

もしかして、知ってる?

「サラ。のんびりしてていいの?出勤の時間に間に合わなくなるわよ」
「え?あ、そうね。行ってくる。樹里は?」
「先に行ってて。お着物片付けてから行く」
「分かった」

モヤモヤするけど、樹里を置いて先にケンジさんのお店に向かった。

ケンジさんに髪を巻いてもらいながら考えるのは、さっきの樹里の態度。
あれは知ってるって顔。

でも、樹里から何も言われたことはない。
そんな態度を取られたこともない。

聞いてみようか。
知ってるのかどうか。
でも、知らなかった時は墓穴を掘りそう。

遅れて美容室に到着した樹里と鏡越しに目が合う。
普段と変わりなく薄く微笑んでから、案内された自分の席へと歩いて行く樹里。

アタシの思い過ごしだったのかもしれない。
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