銀座のホステスには、秘密がある
殿と並んで歩く帰り道。
殿の隣りに乗るタクシー。
そうしてアタシの部屋でくつろぐ殿。

最初は一々ドキドキしてたけど、今は落ち着いて殿の方が見られる。
できるならずっとこの状態が続いてほしい。

「達樹。明日は何時起き?」
「明日はちょっとゆっくり。アキラは寝てていいぞ」
「ううん。ちゃんと起きるよ」
「じゃさ。髪を切りに行きたいんだけど、この辺どっかある?」
「アタシの行きつけのとこでいい?」
「あぁ。教えてくれるか?」

こたつに入ってごろんと横になる殿は、アタシが熱燗を用意するのを待っている。
もう熱燗の作り方のコツも覚えた。

シャワーをして、部屋着に着替えて、熱燗を持って殿の横に座る。
もちろん軽くメイクするのは忘れない。

「どんなヘアスタイルにするの?」
「ん?気分転換に染めてみようかな」
「何色にする?」
「何色が似合うと思う?」
「そうね。無難に栗色?」
「普通過ぎだろ。金髪くらいしなきゃインパクトないだろ」
「えー。達樹は、金髪に合わないと思うよ」
「アキラは似合いそうだな」

こたつで二人丸まってそんな他愛もない話しをしながら眠たくなるの待った。
一緒にいるのが当たり前って感じになってきた気がする。

翌日。二人で髪の色を変えに行った。
アッシュグレージュって色らしく、グレーとベージュの間の明るめの色にしてもらった。
殿も同じ色。

仕上がって、二人で目が合うと、ニヤリと殿が笑った。

胸の奥から温かい感覚が広がっていく。

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