銀座のホステスには、秘密がある
「サラ。髪の色変えたんだね」
「そうなの。どう?」
「とてもよく似合ってる」
お着物の時のヘアスタイルの打ち合わせをするからって、少し早めにケンジさんのお店に来た。
ケンジさんが受付で待っててくれて、すぐにアタシの髪に気付いてくれた。
そんなことさえ嬉しい。
本当は、殿とお揃いなんですって言いたい。
そんなの言える訳ないんだけど。
「では、こちらへどうぞ」
通されたのはいつもの美容室の椅子じゃなくて、奥のソファー席。
目の前には数冊のヘアカタログの雑誌が準備してある。
「これがお着物の写真で……」
アタシも用意してきた写真と雑誌の切り抜きを、ガラスのテーブルの上に置いた。
「サラ。すごいね。よくこんなに勉強したね」
「ううん。でもどれがいいのかやっぱり分かんなくて。プロの目で見て決めてもらいたいなって。甘えてもいい?」
「これだけ準備されたら手を抜くわけにはいかないね」
「あ、忘れてた。これも使ってほしいんだけど」
アタシが取り出したのは簪。
「簪か。それだったら和風か、和モダンって感じかな」
「それとこれに櫛もあるの」
「櫛かぁ」
ケンジさんが渋い顔をしてる。
「どっちかでもいい?」
人差し指を唇に当ててケンジさんが聞いてくる。
「どっちかだったら、櫛にして」
「櫛の方メインなの?」
「そう。お願い」
殿にもらう予定の櫛。
それだけははずせない。
渋るケンジさんを説き伏せて、なんとなくヘアスタイルが決まった。
「準備にすごい気合が入ってるね。何か特別な日?」
「仕事始めだからだよ」
「ふーん。それだけ?」
うふふ。と笑ったけど、アタシの顔のニヤつきはいろんなことを話してしまったみたいで、
「はいはい。良かったね」
って、何にも言ってないのにケンジさんは笑ってた。
「そうなの。どう?」
「とてもよく似合ってる」
お着物の時のヘアスタイルの打ち合わせをするからって、少し早めにケンジさんのお店に来た。
ケンジさんが受付で待っててくれて、すぐにアタシの髪に気付いてくれた。
そんなことさえ嬉しい。
本当は、殿とお揃いなんですって言いたい。
そんなの言える訳ないんだけど。
「では、こちらへどうぞ」
通されたのはいつもの美容室の椅子じゃなくて、奥のソファー席。
目の前には数冊のヘアカタログの雑誌が準備してある。
「これがお着物の写真で……」
アタシも用意してきた写真と雑誌の切り抜きを、ガラスのテーブルの上に置いた。
「サラ。すごいね。よくこんなに勉強したね」
「ううん。でもどれがいいのかやっぱり分かんなくて。プロの目で見て決めてもらいたいなって。甘えてもいい?」
「これだけ準備されたら手を抜くわけにはいかないね」
「あ、忘れてた。これも使ってほしいんだけど」
アタシが取り出したのは簪。
「簪か。それだったら和風か、和モダンって感じかな」
「それとこれに櫛もあるの」
「櫛かぁ」
ケンジさんが渋い顔をしてる。
「どっちかでもいい?」
人差し指を唇に当ててケンジさんが聞いてくる。
「どっちかだったら、櫛にして」
「櫛の方メインなの?」
「そう。お願い」
殿にもらう予定の櫛。
それだけははずせない。
渋るケンジさんを説き伏せて、なんとなくヘアスタイルが決まった。
「準備にすごい気合が入ってるね。何か特別な日?」
「仕事始めだからだよ」
「ふーん。それだけ?」
うふふ。と笑ったけど、アタシの顔のニヤつきはいろんなことを話してしまったみたいで、
「はいはい。良かったね」
って、何にも言ってないのにケンジさんは笑ってた。