銀座のホステスには、秘密がある
「へー。その様子なら、たっちゃんも知らないんだ」

得意気に言う女の声に、やらかしたと気付いた。

「たっちゃんとあんたって、ヤッてないんだね。へー。そうなんだ。じゃ、あんまり問題ないか。たっちゃんを結菜に返してくれたら、黙っててあげる」
「お金は払うわよ。だから、上杉様のことは……」
「お金なんていらないわよ。自分で稼げるし、欲しい物はたっちゃんに買ってもらうから。だから、あんたはさっさとたっちゃんの目の前から消えてくれればいいから」
「結菜さん……」
「やっと結菜の名前覚えてくれたね?でも、もう別にいいよ。結菜が男になんて負ける訳ないし。もうあんたのこと何とも思ってないから。たっちゃんだって男には興味ないだろうし……」

アタシを支えていた大事な何かが、音を立てて崩れていくようだった。

どうして男ってだけでこんな言われ方しなきゃいけないの?
どう見てもこんな娘よりアタシの方が努力してきた。
少しでも女らしく見えるように、女らしい気配りができるように。
周りの女の人たちをたくさん見て、研究して、練習してきた。

見た目も完璧に女になれたって思ってたのに……

どうして、男に生まれたんだろう。

小さな頃からピンクやリボンが好きだった。
戦いごっこなんて嫌いだった。そんなことより折り紙で遊ぶのが楽しかった。

なのに、小学生になり、中学生になると、それはおかしいって。もっと男らしくしろって何度も何度も言われた。

男らしいって何?

男がスカート着ちゃいけないの?

男が、男を好きになったら、どうしてダメなの?



女に生まれたかった。

女として殿に出会いたかった。
< 144 / 222 >

この作品をシェア

pagetop