銀座のホステスには、秘密がある
一旦メイクを落として、一から作っていく。
時々、樹里がカーテンの下から必要なメイク道具や飲み物まで入れてくれた。

「樹里。フロアに戻らなくていいの?」
「うん。大丈夫。風邪っぽいって言って来たから」
「そう。ごめんね、アタシのせいで」
「別に、サボりたかっただけだから」

いつもと変わりなく接してくれる樹里の態度がありがたい。

「いつから気付いてたの?」
「ん?結構前かな」
「そっか。アタシって分かりやすいのかなぁ」
「そんなことないよ。フロアでのサラは完璧よ」
「……なんで分かったの?」

樹里にまでバレてるとは思わなかった。
こうなると他の人にもバレてる可能性はある。

「サラは、絶対ここの更衣室を使わないでしょ?おかしいなって思ってたの。なんで面倒なのに一々美容室で着替えてくんだろって……そんな時、誰かがこのカーテンを開けた時に、サラがさっと目を逸らしたから。それが、うちの弟の反応にそっくりで……見ちゃいけないって思うんでしょ?そこからもしかしてって思って……ここで着替えないのはバレた時のため?」

樹里はお見通しだったみたいだ。

「軽蔑する?」
「なんで?サラはサラだよ。そんなこと関係ない」
「アタシ……男だよ……」

言葉にした途端、涙が溢れてきた。

もうイヤだ。

これから先もずっとこんな風にみんなを騙して、必死で嘘をついて、周りに気を遣いながら生きていかなきゃいけないなんて……もう、ヤダ。

シャっとカーテンが開く音がして樹里が現れた。

「樹里ー」
「なんで泣いてんのよ。あんたらしくもない」
「だって。もうみんなにバレちゃったし……」
「みんなは知らない。みんなは気が付いてない」
「見つかったの。グリッターの結菜に……」

樹里が息を呑む音が聞こえた。
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