銀座のホステスには、秘密がある
「もう。風邪気味って言ったでしょ。もう少し休ませてよ」

「樹里。無理そうか?サラが来ないだろ?もう回しきれなくてさ。あいつどこ行ってんだよ」
ゴンちゃんの声がすぐそばで聞こえる。
それなのに樹里がアタシの方へニッと笑って見せるから、申し訳ない気持ちがする。

「そうだね。サラが帰ってきたらキツクお仕置きしておくよ」
樹里は楽しそうに返事をした。

「おまえ。サラの居場所知らねーか?携帯鳴らしてるのに、あいつ出ねーんだよ。樹里。頼む。少しでいいからフォローしてくれよ。上杉様がいらっしゃってるんだよ」

その声に樹里と目が合った。

殿が来てる?
今日は来れなさそうって言ってたのに……

「分かった。出るよ」
そう答えたのは樹里。

「悪いな。サラが見つかったらすぐに代わりに寄こすからな」
ゴンちゃんの言葉に、
「やめて。上杉様とサラを会わせないで」
樹里がアタシを見ながらそう答えた。

「樹里……」
「サラはここにいて。もう上杉様と会っちゃダメよ。あたしがなんとかするから」
「でも……」
「取り敢えずグリッターの結菜の言う通りにしておきましょ」

樹里がシャンパンゴールドのドレスを引きずって出て行った。

殿が来てる。

あんなメールを送ったのに、会いに来てくれたんだ。

殿……会いたい。

すぐそこに殿がいるのに、ここから出られないもどかしさを感じながら、ひたすら樹里が戻ってくるのを待った。

そうしているうちに、アタシが奥に隠れていることがゴンちゃんにもママにも見つかってしまった。
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