銀座のホステスには、秘密がある

「お願い。もう、アタシの前に現れないで」
だって殿の顔を見たらこれ以上嘘がつけなくなる。

「そういうことか。俺は騙されてたんだな。おまえも売り上げの為に男を騙すのか？」

え？

全身の血が凍りついた。

「おまえは違うと思ってたよ」

怒るでもなく、バカにしたようにでもなく、殿は自分が傷ついたように小さな声で言う。

「やっぱり、サラは銀座の女なんだな」

違う。
アタシは本当に殿が好きなの。
殿の為ならなんだってできる。

何もいらない。
ただ隣りにいてくれるだけで良い……


「もう、殿って言ってくれないんだな」

言ってるよ。
心の中でたくさん言ってるよ。

「……ごめんなさい」

「謝るなよ」

もっと怒ってくれていい。
バカだと罵ってくれていいのに、
「悪かったな。二度とおまえの前には現れないよ」
殿は最後まで優しい。

その言葉を言うと、殿は背中を向けて行ってしまった。

待って。
違うの。

喉元まで出かかってる声を必死に我慢した。

殿。

殿。

もし、アタシが女だったら、アタシを抱いてくれた？
彼女にしてくれた？
貴方とずっと一緒にいたいのに……

殿の背中がアタシの涙で揺れている。

殿はもう答えてくれない。
銀座の喧騒が、アタシは一人ぼっちなんだと教えてくれた。