銀座のホステスには、秘密がある
恋をしたいと思っていた。

些細なことに幸せを感じたり、悩んだら友達に相談したり、そんな楽しい恋愛がしたかった。
殿とならできると思っていた。

だけど現実はそんな上手くはいかない。

恋愛ってこんなに切なかったんだって、改めて知った。


もう殿とは会えない。
ただ後悔してるのは、殿を傷つけたこと。

騙すつもりなんてなかったけど、売り上げのために近づいたと思われてしまった。

そんなこと絶対にないのに……

だけど、ほんとのことが言えないということは、騙してることに違いはないのかもしれない。

殿に男だってことは、知られたくない。
知られるくらいなら、この寂しさを乗り越えた方が良い。

そんなつもりはなかったけど、結局アタシはそんな女になってしまった。

売り上げのために恋愛する女に……


不意に龍太郎ママの言葉を思い出した。

「のめり込み過ぎないことね。
あたしたちは夜に生きてるのよ」

そういうことか。

アタシは銀座の女なんだ。

銀座での恋愛は駆け引き。
いかに惚れさせて、お店に来ていただくか。

そんなことやってるから、本当の恋愛が本当とは取ってもらえない。

これがアタシが選んだ道だとしたら、殿を傷つけてまで進もうとしてる道だとしたら、
最後までその道を貫き通すしかないのかもしれない。
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