銀座のホステスには、秘密がある
「ありがとうございました。またいらしてくださいね」
「あぁ。サラに会いにまたくるからな」

目を細めて嬉しいって顔で笑ってお見送りをする。

「さ。戻りましょう」
「サラさん。今日全く休憩取ってないですよね?」
「そんなものいらない」

心配そうな目をして見上げる彩乃を引き連れてさっさとエレベーターに戻る。
今日は他にもアタシを指名してくださるお客様がいらしてるから、外でゆっくりなんてできない。

「最近のサラさん。ちょっと頑張り過ぎなんじゃないですか?」
「……」
「ちゃんと休んでください」
「彩乃。今日アフタ―に誘われたら行ける?」
「…はい。大丈夫ですけど……」
「無理はしなくていいからね。クリスマスを一緒に過ごす人はいないの?」
「そんな人いません。サラさんこそ、上杉様と……」
「さぁ。あと一頑張りよ。ちょっとメイク直してくるわね」

あれから数日が過ぎた。

ずっと休みなく働いて、働いてない時は自分磨きに全ての時間を使った。
こうでもしてないとすぐに殿を思い出す。

「サラ。次のとこ行ける?」
メイクルームにゴンちゃんが呼びに来る。

「もちろんよ。どなた?」
「2番の山下様」
「分かった」

スマホを操作して、山下様の情報を呼び出す。
先に来店を告げて来られる方は、前もって知識を入れておくけど、突然の来店にはスマホが役に立つ。

「サラ。少し休むか?」
「何言ってるの。クリスマスよ。休んでなんかいられないでしょ」
「そうか……」

真紅のカーテンの先に早く戻りたい。

「山下様。お待ちしてました」
「サラ。やっと会いに来れたぞ」
「山下様はサラのサンタですね」

トパーズ色の中のアタシは、嘘でもずっと笑っていられるから。
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