銀座のホステスには、秘密がある
「サラ。着物がよく似合ってるな。今日はまた一段と美しい」
「くーさんも素敵です」

あれから一時間も経ってないのに、アタシはもう他の男の人に笑いかけてる。

これが仕事だと言ってしまえばそうなのかもしれないけど、殿が他の女と歩いてただけで心が落ち着かないのに、アタシは何をやってるんだろう。

「どうした?悩み事か?」
くーさんが不安げな顔でアタシを見る。

いけない。仕事に集中しなきゃ。

「くーさんに喜んでもらえるかどうか……今日のお礼に、これをどうぞ」

小さな箱の中身は万年筆。
くーさんが先日失くしたと言っていたから、用意しておいた。

「嬉しいな。サラと同伴できて嬉しいのは私の方なのに。私からもお礼だよ。受け取ってくれるかい?」

くーさんも小さい箱を出してきた。

「何ですか?」
「開けてみなさい」

箱の中には豪華なパールの指輪。

「大きい……」
「あはは……サラにはそれくらい大きい方が似合うだろう」

台座が長くても更に長いアタシの指にぴったり収まる。

「くーさん。ありがとう」
「さ。遠慮しないで食べなさい」

急な同伴のお願いにもかかわらず、くーさんは優しく承諾してくれた。

アタシはお客様に恵まれている。
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