銀座のホステスには、秘密がある
突然現れたあかねママにみんな一瞬キョトンとしたけど、
「どういうこと?」
「あかねママは矢部ゆかりを知ってるの?」
次から次へ質問しだした。

「矢部ゆかりはね。計算高い女なのよ。あのふんわりとした印象も作り上げてるだけ。実際のあの女は、人の男だって平気で手を出すのよ」
驚きの事実だった。

「今回のことは、上杉様は被害者よ。あの女に利用されたのよ」
「じゃ、矢部ゆかりが上杉様に手を出したの?」
「矢部ゆかりの本当の目的は上杉様じゃない。旦那への当てつけ。もしくは今でもあの美貌に男が寄ってくるって言いたいんじゃないの?そんな女なのよ」
「そうなの?天然だと思ってた」
「計算よ。自分がどう見えるのかいっつも計算して動いてるのよ。バラエティー番組に出てるらしいけど、それも減ってきてるそうじゃない。ここらでスキャンダルでも起こして注目度を上げて、あわよくば女優に戻りたいはずよ」
「でも、結婚してるのに……」
「矢部ゆかりの旦那は、映画監督の鈴木さんなのよ。どれだけ愛人がいると思ってるの。主演女優にはみんな手を出してるって有名な話よ」
「だから浮気したの?」
「鈴木さんに相手にされなくなったか。もう一度自分の方を見てほしかったか。どっちにしても離婚なんかする女じゃないわよ」

あかねママの言い方は矢部ゆかりを憎んでいるような感じがする。
そこまでいかなくても嫌ってはいるんだと思う。

「あかねママ。矢部ゆかりとなんかあったの?」


みんなが新たな情報に夢中になってる間に、樹里がそっと聞いていた。
< 170 / 222 >

この作品をシェア

pagetop