銀座のホステスには、秘密がある
その日はお客様も少なかったから、お店の女の子は早めに帰して、最後はあかねママと樹里とアタシとそれからゴンちゃんとで閉店時間まで残ってた。
その後、飲み足りないって言いだしたママがアタシたちを龍太郎ママのお店に誘った。
アタシも飲み足りない。って言うか聞き足りない。
もっと矢部ゆかりの話が聞きたい。
「そろそろ来るかと思ってたわ」
いらっしゃいの言葉の前に龍太郎ママはあかねママの目を見つめていた。
「あなたがどんな顔してるのか見に来たの」
胸を張ったあかねママ。
二人の間の空気が張りつめてる。
アタシも樹里もゴンちゃんも、二人の異様な雰囲気に目だけしか動かせなくて、
【どういうこと?】
【知らないわよ】
【ケンカ?】
声に出さない会話をするしかない。
「いらっしゃーい。今日は暇だったから嬉しいわ。この二人はほっといてこちらへどうぞ」
龍太郎ママとあかねママの横からひょいと顔出したのはピンク色の髪をしたキャリーちゃん。
キャリーちゃんがアタシたちをひっぱるようにテーブル席へと案内してくれた。
「……」
「……」
「……」
誰も声が出せない。
「やだもー。お通夜じゃないんだから。さ、グラス持って。カンパーイ」
キャリーちゃんが無理やり乾杯させる。
「みんな知ってるの?この二人が昔ラブラブだったって」
「えぇっ?!」
グラスを置くと同時にキャリーちゃんが暴露するから、樹里とゴンちゃんの目が丸くなってる。
「やだー。知らなかったの?あはっ。聞かなかったことにして」
首を傾げて笑うキャリーちゃんに龍太郎ママが、
「バラしてんじゃないわよ。まったくもう」
小さい扇子でぺチリと叩いた。
「いたーい。でも、二人が別れた理由までは言ってないわよ。あかねママはその件で来たのよね?」
え?
みんな一斉にあかねママを見る。
「もう。そこまで言ったらバラしてるようなもんじゃない」
あかねママが水割りをグイと飲んだ。
「なになに?別れた理由って何?」
「今回のことと関係あるんですか?」
「え?矢部ゆかりが関係あるんですか?」
アタシ、ゴンちゃん、樹里がほとんど同時に口を開いた。
「もう。あんたのせいで不味い酒になりそうじゃない」
龍太郎ママがそっぽを向く。
全員の視線があかねママに集まったところで、
「しょうがないわね。あたし達が別れたのは龍太郎の浮気のせいなの」
あかねママが言いきった。
「それだけじゃないでしょ!」
龍太郎ママが反論する。
「なによ。あなたがあの女に手を出さなかったら、あたしだって女優を辞めてなかったわよ」
「そんな弱いメンタルだから、あんたはマズイことになるとすぐ逃げ出すのよ」
「じゃぁ。自分の男が自分のライバルとキスしてるとこを平気で見てろって言うの?」
「キスなんてしてなかっただろ?」
「してたわよ。知らないと思ってたの?みんな見てたんだからね」
「してない」
「してた」
ギラギラした目で睨み合う二人のママ。
迫力あり過ぎで誰も口を挟めない。
「悪いと思ってる。今でもあの日のことを後悔してる。酔った勢いって言い訳になるけど、魔が差したんだ……」
水割りのグラスを片手で持って飲み干した龍太郎ママは、男に戻ってる。
「ふん。龍太郎はね、あの女に負けたのよ」
あかねママの口元が震えてる。
誰も何も言えない……って状況だったのに、
「あはっ龍太郎ママ。男に戻っちゃってる」
キャリーちゃんだけは楽しそうだった。
その後、飲み足りないって言いだしたママがアタシたちを龍太郎ママのお店に誘った。
アタシも飲み足りない。って言うか聞き足りない。
もっと矢部ゆかりの話が聞きたい。
「そろそろ来るかと思ってたわ」
いらっしゃいの言葉の前に龍太郎ママはあかねママの目を見つめていた。
「あなたがどんな顔してるのか見に来たの」
胸を張ったあかねママ。
二人の間の空気が張りつめてる。
アタシも樹里もゴンちゃんも、二人の異様な雰囲気に目だけしか動かせなくて、
【どういうこと?】
【知らないわよ】
【ケンカ?】
声に出さない会話をするしかない。
「いらっしゃーい。今日は暇だったから嬉しいわ。この二人はほっといてこちらへどうぞ」
龍太郎ママとあかねママの横からひょいと顔出したのはピンク色の髪をしたキャリーちゃん。
キャリーちゃんがアタシたちをひっぱるようにテーブル席へと案内してくれた。
「……」
「……」
「……」
誰も声が出せない。
「やだもー。お通夜じゃないんだから。さ、グラス持って。カンパーイ」
キャリーちゃんが無理やり乾杯させる。
「みんな知ってるの?この二人が昔ラブラブだったって」
「えぇっ?!」
グラスを置くと同時にキャリーちゃんが暴露するから、樹里とゴンちゃんの目が丸くなってる。
「やだー。知らなかったの?あはっ。聞かなかったことにして」
首を傾げて笑うキャリーちゃんに龍太郎ママが、
「バラしてんじゃないわよ。まったくもう」
小さい扇子でぺチリと叩いた。
「いたーい。でも、二人が別れた理由までは言ってないわよ。あかねママはその件で来たのよね?」
え?
みんな一斉にあかねママを見る。
「もう。そこまで言ったらバラしてるようなもんじゃない」
あかねママが水割りをグイと飲んだ。
「なになに?別れた理由って何?」
「今回のことと関係あるんですか?」
「え?矢部ゆかりが関係あるんですか?」
アタシ、ゴンちゃん、樹里がほとんど同時に口を開いた。
「もう。あんたのせいで不味い酒になりそうじゃない」
龍太郎ママがそっぽを向く。
全員の視線があかねママに集まったところで、
「しょうがないわね。あたし達が別れたのは龍太郎の浮気のせいなの」
あかねママが言いきった。
「それだけじゃないでしょ!」
龍太郎ママが反論する。
「なによ。あなたがあの女に手を出さなかったら、あたしだって女優を辞めてなかったわよ」
「そんな弱いメンタルだから、あんたはマズイことになるとすぐ逃げ出すのよ」
「じゃぁ。自分の男が自分のライバルとキスしてるとこを平気で見てろって言うの?」
「キスなんてしてなかっただろ?」
「してたわよ。知らないと思ってたの?みんな見てたんだからね」
「してない」
「してた」
ギラギラした目で睨み合う二人のママ。
迫力あり過ぎで誰も口を挟めない。
「悪いと思ってる。今でもあの日のことを後悔してる。酔った勢いって言い訳になるけど、魔が差したんだ……」
水割りのグラスを片手で持って飲み干した龍太郎ママは、男に戻ってる。
「ふん。龍太郎はね、あの女に負けたのよ」
あかねママの口元が震えてる。
誰も何も言えない……って状況だったのに、
「あはっ龍太郎ママ。男に戻っちゃってる」
キャリーちゃんだけは楽しそうだった。