銀座のホステスには、秘密がある
「久しぶり……」
「……」

声が出ない。

殿が目の前にいる。
生きてた。それだけで嬉しい。

「サラ?」

殿の低い声がアタシの名前を呼ぶ。
胸が震えて、立ってられない。

「一目見たら帰るつもりだったんだ」

無精ひげを生やして、少しやつれた殿は、力なく笑った。

そんな顔しなくても、アタシは殿が悪いんじゃないって知ってるよ。

そう伝えたいのに、喉が詰まって何も言えない。

「最後におまえに会えて良かったよ」

殿……

アタシに背を向けそうになる殿の腕を掴んだ。

「い……」
行かないで。
もうアタシから離れないで……

声が出てくれない。

「サラっ……」
殿の声も詰まる。
「泣くなよ。良い女が台無しだろ?」

優しい殿の声にアタシはもう限界だった。

「殿……」

それきり涙は止まらなかった。
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