銀座のホステスには、秘密がある
お店に入るとゴンちゃんが言ってたように一番奥まったお席に案内してくれた。
ここは普通は団体のお客様が入るところ。
広い空間に殿とアタシと二人だけだと、いたたまれない雰囲気が更に強くなる。
カチャ
アタシが水割りを作る音だけしか聞こえない。
カラン
最後にマドラーで一混ぜして、殿の前にコースターと水割りを置く。
「…殿」
「サラ…」
声が重なった。
「ごめんなさい。殿からどうぞ」
「いや。サラから」
「ううん。アタシのは大したことないから……」
「いや。サラの話を聞きたい」
「アタシだって殿の話を……」
殿がニヤリと笑うから、アタシの口元も緩む。
「元気だったか?」
「……はい」
殿が笑っている。
それだけで胸がいっぱいになる。
「着物。似合ってたな」
「見てくれたんですか?」
殿がポケットから取り出したスマホを操作してアタシの方へ向ける。
そこには着物姿のアタシの写真。
「これ……」
「店のブログのだろ?彩乃に教えてもらった」
「彩乃に?彩乃とは連絡取ってたの?」
「こうなる前にな。彩乃が俺を責めるんだよ。なんでサラを泣かすんだって……」
お店には上杉様から同伴を断られたことにしてた。
彩乃にも何も言ってない。
彩乃だって何も聞いてこなかったけど……心配かけてたのかもしれない。
「仕事始めの日の写真なんやろ?なんでこんな寂しそうに笑ってるんだ?」
「殿……」
「新しい男ができたから、俺はもう用済みだなんて言うたくせに、この日に同伴したのはいつもの常連さんなんだって?」
「なんで、それを……」
彩乃?
彩乃が殿に話したのね。
「彩乃を責めるなよ。あいつは本当におまえに惚れてるみたいだから。おまえを泣かせたのが俺だと思って聞いてきたんだ。櫛(くし)を贈ったのが俺だって気付いたんやろ?」
「……はい」
あの時嬉しくて堪らなくて、櫛を握りしめて泣いてしまった。
その場にいたみんなに見られてても、止まらなかった。
「別れた男からのプレゼントで、なんで泣く?」
「それは……」
殿が好きだから……
ここは普通は団体のお客様が入るところ。
広い空間に殿とアタシと二人だけだと、いたたまれない雰囲気が更に強くなる。
カチャ
アタシが水割りを作る音だけしか聞こえない。
カラン
最後にマドラーで一混ぜして、殿の前にコースターと水割りを置く。
「…殿」
「サラ…」
声が重なった。
「ごめんなさい。殿からどうぞ」
「いや。サラから」
「ううん。アタシのは大したことないから……」
「いや。サラの話を聞きたい」
「アタシだって殿の話を……」
殿がニヤリと笑うから、アタシの口元も緩む。
「元気だったか?」
「……はい」
殿が笑っている。
それだけで胸がいっぱいになる。
「着物。似合ってたな」
「見てくれたんですか?」
殿がポケットから取り出したスマホを操作してアタシの方へ向ける。
そこには着物姿のアタシの写真。
「これ……」
「店のブログのだろ?彩乃に教えてもらった」
「彩乃に?彩乃とは連絡取ってたの?」
「こうなる前にな。彩乃が俺を責めるんだよ。なんでサラを泣かすんだって……」
お店には上杉様から同伴を断られたことにしてた。
彩乃にも何も言ってない。
彩乃だって何も聞いてこなかったけど……心配かけてたのかもしれない。
「仕事始めの日の写真なんやろ?なんでこんな寂しそうに笑ってるんだ?」
「殿……」
「新しい男ができたから、俺はもう用済みだなんて言うたくせに、この日に同伴したのはいつもの常連さんなんだって?」
「なんで、それを……」
彩乃?
彩乃が殿に話したのね。
「彩乃を責めるなよ。あいつは本当におまえに惚れてるみたいだから。おまえを泣かせたのが俺だと思って聞いてきたんだ。櫛(くし)を贈ったのが俺だって気付いたんやろ?」
「……はい」
あの時嬉しくて堪らなくて、櫛を握りしめて泣いてしまった。
その場にいたみんなに見られてても、止まらなかった。
「別れた男からのプレゼントで、なんで泣く?」
「それは……」
殿が好きだから……