銀座のホステスには、秘密がある
ピッタリと寄り添って、離れてた間の寂しさを埋めようとしてた。
殿も何度もアタシの名前を呼んで、アタシの髪に触れてくる殿。

「殿。これからどうするの?」
「しばらく休業することにした。それからのことは全くな。どうなるか俺にも分からん」
「矢部さんは?」
「知らねーよ。あの女、さも俺と関係があるかのような会見しやがって。俺の家は都心じゃないっつーの」
「千葉だよね?」
「週刊誌なんて嘘ばっかりやろ?」
「そうなんだね」
「サラも俺が不倫したと思ってたんか?」
「ううん。みんな違うって言ってたよ」
「そうか……」

グラスに口を付ける殿が嬉しそう。

「最後にサラに会えて良かった」

殿の目が遠くを見てる。
アタシたちが踏みこんじゃいけない男の顔。

「戻ってくる?」
恐る恐る聞くと、アタシに気付いた殿が微かに笑う。
「迎えに来る」

どちらとも取れる言い回しに、不安しか感じない。
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