銀座のホステスには、秘密がある
「上杉様。お邪魔しますね」
あかねママが美しい仕草でテーブルについたけど、その目が笑っていない。

「失礼します」
一緒に入ってきたのは樹里。

「どうしたの?」
アタシが聞くと樹里が渋い顔をする。

「今、お客様を見送りに下に降りたの。そしたら、すごい数のマスコミが一斉にこっちを見てカメラを構えたの。営業妨害だってママが怒っても知らぬ顔で取り囲んでる。おそらく……」
樹里が殿を見る。

「おそらく俺を待ってんだろ。悪いな、樹里」
「ううん。上杉様は悪くないです」
「そうですよ。上杉様は被害者です」
ママも殿の味方らしい。

「ママ。ありがとう」
「ただね。このままじゃ上杉様がお帰りになる時が大変だと思うの。あの人たちの狙いはそこなんでしょ?」

殿が帰る時に写真を撮るつもりなの?
殿は被害者なのに?

「そんな……」
「いつまでも逃げんなってことなんやろな」
「殿」
「いつかは見つかるやろな、とは思ってたけどな」

寂しげに笑う殿を見てるのが辛かった。
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