銀座のホステスには、秘密がある
「すごいことになってますよ」
お客様をお見送りに行ったお店の女の子たちが戻って来ては次々に騒いでいる。

「上杉プロデューサーはいるかって」
「聞かれたの?」
「うん。テレビカメラまであった」
「なんて答えたの?」
「知りませんって。逃げてきた」
興奮気味に話す女の子たち。

「ごめんね、みんな」
「サラさん。あたしたちのことは気にしないでください」
「うん」
みんなの優しさに、こんな時だけど嬉しくなる。

最後のお客様をお見送りするっていうローラママについてアタシもエレベーターで一緒に降りることにした。
あかねママもエレベーターの扉が閉まる瞬間乗ってきた。

「渡辺様。ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません」
「いいよ。あかねママのせいじゃないんだろ?」
「遠藤様も。またいらしてくださいませね」
「ねぇママ。本当に矢部ゆかりの不倫相手が店に来てたの?」
「まさか。どこからそんな噂が出たんでしょうね。不思議でたまりませんわ」
おほほ……、と本当におかしそうに笑うあかねママは、やっぱり役者なんだと思う。
嘘言ってるって感じじゃなくて、本当に別のことを信じ切ってるって顔。

「サラも。迷惑な話だな」
「本当迷惑ですよね」
ママの真似してアタシも演じてみたのに、ママがチラリと睨んでくるから怖い。

「さ、渡辺様も遠藤様もお気をつけくださいね」
ローラママの言葉を合図にエレベーターが静かに止まり、目の前の扉が開いた。
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