銀座のホステスには、秘密がある
「ゴンちゃんから聞いた?」

やっぱりそうなんだ。

「ママ。本当にアタシ?アタシでいいの?」
「そうよ。サラにはもう少し責任を持ってもらいたいの」
「無理だよ。しかも今日からでしょ?何も準備してないのに……」
「普段のあなたの仕事ぶりを見せてあげればいいのよ」

この娘よ。よろしくね。
そう言って、あかねママはパールの指輪をはめた手でアタシの肩に触れると、そのままフロアに出て行った。

い、いきなり二人?

ケンジさんの美容室で見た娘はやっぱりこの娘だ。
アタシからの視線を感じると、俯いてしまっている。

「素敵に結ってもらったのね」
「え?」
「髪。さっき美容室で会ったでしょ」
「はい。あ、あの私、こういうアルバイト初めてで、どうしていいか分からなくて、あの、よろしくお願いします」

言うなり、ブンと音がしそうなくらいに頭を下げた。
それじゃ余り美しくない。

「あの美容室は自分で?」
「いえ、今日出勤してきたら、ローラママに怒られて。それであの美容室を紹介されました」

ローラママったら、アタシがいるの分かってたんだ。

「あの、さっき、初めてサラさんを見た時、ちょっと感動しました。こんな美しい人がいるんだって。ドキドキしました」
「ありがとう嬉しいこと言ってくれるわね。でもね、そのセリフはアタシじゃなくてお客様に言ってあげて」
「はい。一生懸命頑張ります!」

鼻息が荒い。
気合がみなぎって空回りしそうなタイプ。

まるで、数年前の自分を見てるみたい。

本当にアタシが教育係でいいの?
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