銀座のホステスには、秘密がある

完全に男になったアタシを待ってたのは、みんなの悲しそうな顔。

「みんなごめんね」
これまでみんなを騙し続けてきたこと、本当にごめん。

「バレずにちゃんと帰ってくるのよ」

また戻って来ていいの？

アタシの無言の質問に、みんなは黙って肯いた。

「……」
もう言葉が続かない。
ただ首を縦に振って答えるしかできなかった。

「車のスタンバイができたそうよ」
何度も肯き、みんなに「ありがとう」を精一杯の想いで口にする。


「それじゃ、開幕よ。みんないい？」
あかねママが言うと、
「はい！」
みんなが一斉に答えた。

戸塚君に案内されて、殿と彩乃が小さな裏口から出て行く。
その背中を不安な気持ちで見送った。

「サラ。大丈夫？」
「あかねママ。ご迷惑かけてすみません」
「何度も謝らないで。上杉様だってしつこかったんだから、もうそんなのはいいの」
「はい」
「表はひどいことになってるんだって」
「そうなんですか」
「時間が経つごとに人が増えてってるって。龍太郎から連絡がきたわ」
「上杉様がここにいることは銀座中が知ってるって感じなんですね」
「上手くやらないと、大変なことになりそうね」
「あかねママ。エレベーター降りたら、「上杉様早く」って言ってください」
「はぁ？そんなわざとらしいセリフあたしに言わせないでちょうだい。あたしはね、これでも女優だったのよ。そんな猿芝居お断りよ」
あかねママが鼻で笑ってアタシの側から離れていった。
不安でしょうがない。

アタシは殿に見えるだろうか……

そうして、ドキドキしなが待ってたアタシたちの前に、殿と彩乃が戻ってきた。

はぁはぁと、二人とも胸を押さえている。