銀座のホステスには、秘密がある
「どうだった?」
「大丈夫です。ばっちり上杉様の姿を見せてきました」
彩乃が得意気に言う。

「一斉にフラッシュがたかれて、慌てて戻ってきました」
「そう。つかみは大丈夫ね」
戸塚君の言葉にあかねママが納得してる。

「さぁ、早く上杉様と服を交換して」
あかねママに言われて、殿を奥の更衣室へと案内する。

「殿。これを……」
アタシの置きドレスを渡すと、殿がアタシの手を握りしめた。

「サラ……ありがとう」
「ううん」
「上手く逃げられたら、おまえの部屋に行っててもいいか?」
「殿……もちろん」

殿がクシャリと笑う。
アタシも嬉しくて笑い返した。

「さ、早く」

殿が入った更衣室のカーテンを閉める。

たくさん不安はあるけど、今は殿をここから無事に逃がすことしか考えてない。
好きな人の役に立てることに、幸せと少しの興奮を覚える。

「殿……アタシ……頑張……」
「サラぁ。これどうやって着るんだ?」

へ?

「開けるね」と声をかけてカーテンを開くと、アタシのドレスに絡まっている殿がいた。

「何やってるの?」
「いや。これがちょっと入らなくて……」

アタシのスカイブルーのドレスがはち切れそうになっている。

「待って。上からじゃなく下から……」

二人がかりでようやく殿に着せてみたけど、背中のファスナーは当然しまるはずもなく全開。
それを隠そうとアタシのシャツを上から着せると、今度は前のボタンが閉まらない。

「ヒールも履けないか……」

用意してたアタシのハイヒールは少し小さいみたいで、そこはしょうがないから諦めた。

「ふっ……これが精一杯だな」
「うふふ…そうだね。でもここからが面白いのよ」

笑いかけたアタシに殿が不思議そうな顔をする。

「ローラママ。お願いしまぁす」

アタシが表に呼びかけると「はぁい」ってすぐに返事が返ってきた。

「え?まだあるんか?」

怯える殿に、
「そんな男らしい顔じゃちっともサラに見えないでしょ?」
アタシが言うと同時にメイクルームにみんなが入ってきた。
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