銀座のホステスには、秘密がある
「ただいま」
「サラっ!大丈夫だった?」
「うん……」

アタシの部屋に戻ると、お店に預けてたマスターキーで樹里が先に入ってた。

「上杉様も無事よ」

殿が久しぶりにうちのソファーでくつろいでいる。

「サラ。無事か?」
「殿も……」
「あぁ。サラのおかげだ」

殿がアタシに笑いかけるから、力が抜けてその場に座り込んだ。

「お茶淹れますね。サラさんキッチンお借りします」

彩乃と樹里がキッチンに向かう。

ありがとう。って言いたいのに、声が出ない。

「サラ?何かあったのか?」
ゴンちゃんがアタシに聞くから、殿までもが不安そうな顔で見る。

「ううん。大丈夫。良かったなって、改めて思ってたの……」

樹里と彩乃が淹れてきてくれた日本茶を口にすると、自分がどれだけ緊張してたかって分かる。
お茶が喉を通らない。

「良かったわね。無事に上杉様が逃げられて、本当に良かった」
「これからどうするんですか?」

殿を囲むように樹里と彩乃とゴンちゃんがそれぞれ質問している。

「しばらくは仕事を休むことにした。そうなるようにしむけられてたって言った方が正しいかな」

殿が寂しげに笑う。

殿が何をしたって言うんだろう。
一生懸命に頑張って仕事をしてたってだけなのに、なんでこんな仕打ちを受けなきゃならないんだろう。
アタシだって一生懸命仕事してきた。
なのに、どうして男だってだけで、笑われなきゃいけないんだろう。

理不尽だ。
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