銀座のホステスには、秘密がある
「最初っからサラはうちが合ってたのよ。だからあたしが言ってたじゃない、うちにいらっしゃいって」
龍太郎ママが当然よって顔をして言う。

「クラブ龍太郎に?」

モンテカルロ以外のお店を考えたことなかった。
アタシがニューハーフとして働く?

「サラが来るんだったら、ショーをやってもいいかと思ってるの。それが当たれば今よりもう少し大きいとこに引っ越しよ。大きな舞台に立ちたいって思わない?」

「アタシ、踊れない」
「大丈夫よ。あたしが指導するから」

龍太郎ママの太い指がアタシの手首を掴む。

「どうせあんたは銀座でしか生きられないのよ。これまで窮屈に生きてきたんだから、これからはうちで堂々と生きていきなさい」

龍太郎ママの言う通りだ。
アタシは偽って生きてきた。
いつバレるかとドキドキしながら生きてきた。

もうそうしなくていいんだったら、
嘘をつかずに生きていきたい。

「どう?うちに来る気になった?」

「少し考えさせて……」

それでもまだアタシはこの状況から抜け出す勇気が出なかった。
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