銀座のホステスには、秘密がある
それからどのくらい経ったんだろう。
昼間は半袖でもいいくらいの陽気になった。

陽が陰り、冷たい風が入るようになり、窓を閉めようとバルコニーの方へ向かうと、建物の屋根の上に真っ赤な太陽がいた。

周りの景色全てをオレンジ色に塗り替えて、怖いくらい大きな太陽がアタシに迫ってくる。

太陽に呼ばれるように、ふらりとバルコニーへ足が出た。

少しでも太陽に近づきたかったのかもしれない。
この暗闇から抜け出し、輝きの中へ行きたかったのかもしれない。

アタシの全身が赤く塗り替えられていく。

あの大きな太陽の前ではなんてアタシってちっぽけなんだろう。

光り輝く赤い球が、少しずつ隠れていく。

待って。アタシを置いていかないで。

光が消えたら次にくるのは闇。

怖い。

闇にのまれたくない。


ピンポーン

何の音だろう。

ピンポーン
ピンポーン

それがアタシの部屋のチャイムの音だと気付くのに少し時間がかかった。

ふらふらと玄関へ向かう自分が、自分ではないような気がしてた。
頭で考えて動いてるって言うより、身体が音に反応してる。

震える手で玄関の扉を開けると、

「おう、サラ。元気やったか?」

クシャリと笑う殿がいた。
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