銀座のホステスには、秘密がある
「……ラ……」

誰かがアタシを呼んでいる。

「サラ。もう着いたぞ」

殿の声に完全に目を覚ますと……

「……博多?」

そんなに博多は近かっただろうか。
一瞬で博多に移動した気がする。

「サラ。乗り換えるぞ」

え?

頭がついていかないけど、殿がアタシのスーツケースを持って新幹線を降りるから、慌ててついて行った。

博多でさえ来たことがなかったから、博多で充分だったのに、殿は次の列車に乗ろうとする。

九州新幹線、さくら号。
一歩足を踏み入れると新幹線のイメージが壊された。

「かわいい」
その言葉がぴったりくる室内の装飾。
赤いソファーに木のひじかけ。
座り心地の良いソファーに殿と座ったけど、窮屈さを全く感じなかった。

「だろ?これに乗りたかったんだよ」
殿が嬉しそうに言う。

そしてまた車内販売をとめて、さくら号で有名らしい駅弁を頼む。
もう食べられないって思ったのに、美味しそうでちょっと味見だけって言いながらほぼ完食した。

「ふっ。食べれるやん」
「殿は一つで足りるの?」

アタシたちはしばらくこの可愛らしい新幹線を堪能した。

終点の鹿児島まで行くのかと思っていたら、途中の熊本が近くなると、
「降りるぞ」と下りる準備を始めた殿。

どうやら熊本が目的地らしい。
< 216 / 222 >

この作品をシェア

pagetop