銀座のホステスには、秘密がある
「お疲れ様~」
「お疲れ様でした」

深夜一時を回った頃、クラブ モンテカルロの営業は終わる。
お客様のお見送りから戻ったアタシをママが手招きする。
ほろ酔い状態でご機嫌なママ。
今日はテレビにも出てるちょっと名の知れた弁護士さんがいらっしゃってるからでしょう?

「サラちゃん。今日アフターある?」
「いえ。ないです」
「そう。じゃ、塚本様のアフターに一緒に行かない?」

行かない?って、断っても良さそうな聞き方だけど、ほぼ100%「行くわよね」って意味。

「はーい。ご一緒します」

軽く身支度を整えると、塚本様と一緒にママが来るのを待った。
クラブには営業が終わってからお客様と違う場所へ行くアフターという制度がある。
お店が終わっても、もう少し楽しみたいってお客様の要望に応えるため。
お店が終わったから、「はい、さよなら」じゃ味気ないってもの。
この余韻を楽しむのが、いいらしい。

「塚本様。今日はどちらへ?」
「そうだな。パーッと笑えるところがいいな」

そう言って向かったのは、

クラブ龍太郎

こちらも銀座の有名店。
うちほど大きくないんだけど、居心地が良い。

なぜなら、

「いらっしゃいませ~。や~だ~、ステキな殿方っ」
塚本様の腕に飛びついたのは、黄色いシフォンのドレスを着た誠さん。
昔はゴリゴリの柔道部だったらしい。

「サラちゃんも一緒に来たの?やーねー。アタシの美貌がかすんじゃう」
誠さんは、太い首を隠すようにチョーカーを巻いている。

そう。ここはいわゆるニューハーフの方たちのクラブ。
全員、元は男で、楽しい人ばかり。
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