銀座のホステスには、秘密がある
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
「おしぼりお願いしまぁす」
「シャンパン入りまーす」

トパーズ色の景色は変わっていない。

「いらっしゃいませ。サラでございます」

アタシはお得意の微笑でお客様をお迎えする。

「サラに会いに来たんだよ。相変わらず綺麗だな」

殿と熊本に行ってから数か月が過ぎてた。
あの頃は薄手の上着が必要だったけど、今は暑さ対策なんてものをやらないとすぐに倒れてしまいそう。

「ようこそお越しくださいました」

アタシの隣りに座ったのは薄紫色の上品な着物を着た、
「樹里……里美様はアタシのお客様よ」
「あら。ご挨拶に来ただけよ」
すっかり着物姿が似合うようになった樹里。

モンテカルロは変わらずに華やかだ。

「サラ。テレビ見たぞ。綺麗に映ってたな、隣の女優が霞んで見えたぞ」
「ぅふふ。ありがとうございます」

今では時々テレビに出ては、ご意見役と言われるアタシには似合わない役をやっている。

クラブ龍太郎に行くと、決まって龍太郎ママに
「なんで古巣に戻ったのよ。うちにしておけば良かったのに!」
って必ず言われてしまう。

でも、アタシは元の生活が取り戻せて、本当に幸せだ。
ううん。元通り以上だ。
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