銀座のホステスには、秘密がある
金色のパウダールームでメイクを整える。

目の前にいるのは、ロイヤルブルーのドレスを纏って、高く盛られた髪をしたアタシ。

サラ……

そう。今のアタシは銀座の女。

あの夜。悲惨な結果に終わった初恋がなかったら、今のアタシはいなかったかもしれない。
違和感を抱えながら、大学に行って、サラリーマンをやってたかもしれない。

これはこれで良かったと思おう。

パチンとポーチの口を閉じて、カツリとヒールの音を立てて振り向くと、ちょうどドアが開いて誰かが入ってくるところだった。

「失礼」
「サラさん」

入ってきたのは、グリッターの彩乃さん。

「お久しぶりね。少し痩せたんじゃない?」

その瞬間、彩乃さんの笑顔が消えた。

「彩乃さん。疲れてる?」
「実は……今のお店にいるのが辛くて」
元々細い彩乃さんが更にか細くなったように見える。

「うちのお店はママもいないし、前からお客様と盛り上がることが多かったんだけど、最近はそのノリについて行けてなくて」

アタシは今のお店しか知らないから、他所がどういったもてなし方をするのか想像するしかない。
けど、美容室で会ったあの挑発的な目をした娘たちばかりなら、そんな盛り上げるだけ盛り上げる営業方法もあるのかもしれない。

銀座らしくないとは思うけど……

「サラさん。私も、モンテカルロで働きたいです」
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