銀座のホステスには、秘密がある
今日は早めに銀座に着いた。
おにぎり屋さんで、おにぎりとスープを頼み2階のイートインの窓際に腰を下ろす。
窓から見える銀座は忙しなく人や車が行き交っている。
スープの温かさが嬉しい季節になってきた。

「え?サラさん?」
「愛ちゃん?」
「こんなとこで会えるなんて、今日は早いですね」
「そうだね」
「何読んでるんですか?」
「ん?ちょっと……小説?」
「へー。難しい感じですか?」
「ううん……愛ちゃんは?早くない?」
「今日、休みなんです。で、ちょっと……」
「デート?」
「まぁ。そんな感じですね」

幸せそうに笑う愛ちゃんを見て、羨ましくならないかと言うとそうでもない。

「彼は先に会社員になったんですけど……」

愛ちゃんは、アタシに恋愛の悩み事を相談しだした。

「どう思いますか?絶対、私軽く見られてますよね?」
「そんなことないわよ。男性が仕事に夢中になるのは当たり前のことよ。軽く見てる訳じゃないと思うよ」

偉そうに答えてしまった。

そんなの一般論で、アタシに分かるわけじゃない。
だってアタシは恋愛の経験がないから。

「でも、何の連絡もしてこないのはおかしいですよね?」
「愛ちゃん。そこで騒いじゃダメ。相手を自分に夢中にさせるためには、それくらいの女になってなきゃ」
「ヤキモチ妬かせるんですか?」
「ううん。キレイになればいいのよ」
「そうですよねぇ」
「恋愛は女をキレイにするのよ」
「だからサラさんはそんなにキレイでいられるんですね」

アタシ?
アタシはただの、日々の努力です。
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