銀座のホステスには、秘密がある
「じゃ、先代はアタシのために?」
「そうじゃないの。たぶんそろそろっていう時期だったんでしょうね。でもね、当時のNO,1だったあたしがものすごく反対したの。だって、あなたは……ねぇ」
「女じゃないから?」
「……うん、まぁ、当時はそう思ってた。お店の質が落ちるとか。だけど、先代は違ったのよ。この娘は必ず化けるって、そうあたしに言ったの。先代の言う通りだった。あなたが戻ってきた時、正直焦ったわよ。どうして男の子がここまで化けられるんだって。本当にあなたは美しかった」
「ママ……」
「あたしね。最初の内はあなたに期待してなかったの。どうせ顔ばっかりだと思ってた。続かないって。今から思うとあなたに嫉妬してたのよね。だから、あたしはママ失格なの」
ごめんなさい。ってママが小さくつぶやいた。
新人の頃、何もしゃべれなかった。
お客様の名前も間違えた。
たくさん失敗して、その度に怒られた。
その頃、あかねママは絶対だった。
「あかねママはアタシの憧れよ。入った時から今だってずっとそう。あかねママの誕生日は今でもドキドキするもん。何十個もの胡蝶蘭が並んで、たくさんお客様がいらして、シャンパンがどんどん開けられて……アタシはあかねママを抜いたことはないの」
「時間の問題よ」
「そんなことない。確かに基本を教えてくれたのは先代のママだけど、本当に必要なことはあかねママから習った。今だって、あかねママの真似してる。アタシだけじゃない。みんなだってそう。あかねママはアタシたちの目標だよ。だから辞めないで」
胸が締めつけられて痛い。
引きとめられるんだったらなんだってするよ。
なのに、あかねママは、寂しそうに笑っている。
遠い目をして、アタシを見ていない。
「もう疲れちゃったの」
「ママ……」
言わないで……
「いずれあたしは引退する。サラ。そのつもりでいて」
この話はもう終わりという感じでママは飲み干したコーヒーカップを持ってカウンターの中へ入っていった。
「そうじゃないの。たぶんそろそろっていう時期だったんでしょうね。でもね、当時のNO,1だったあたしがものすごく反対したの。だって、あなたは……ねぇ」
「女じゃないから?」
「……うん、まぁ、当時はそう思ってた。お店の質が落ちるとか。だけど、先代は違ったのよ。この娘は必ず化けるって、そうあたしに言ったの。先代の言う通りだった。あなたが戻ってきた時、正直焦ったわよ。どうして男の子がここまで化けられるんだって。本当にあなたは美しかった」
「ママ……」
「あたしね。最初の内はあなたに期待してなかったの。どうせ顔ばっかりだと思ってた。続かないって。今から思うとあなたに嫉妬してたのよね。だから、あたしはママ失格なの」
ごめんなさい。ってママが小さくつぶやいた。
新人の頃、何もしゃべれなかった。
お客様の名前も間違えた。
たくさん失敗して、その度に怒られた。
その頃、あかねママは絶対だった。
「あかねママはアタシの憧れよ。入った時から今だってずっとそう。あかねママの誕生日は今でもドキドキするもん。何十個もの胡蝶蘭が並んで、たくさんお客様がいらして、シャンパンがどんどん開けられて……アタシはあかねママを抜いたことはないの」
「時間の問題よ」
「そんなことない。確かに基本を教えてくれたのは先代のママだけど、本当に必要なことはあかねママから習った。今だって、あかねママの真似してる。アタシだけじゃない。みんなだってそう。あかねママはアタシたちの目標だよ。だから辞めないで」
胸が締めつけられて痛い。
引きとめられるんだったらなんだってするよ。
なのに、あかねママは、寂しそうに笑っている。
遠い目をして、アタシを見ていない。
「もう疲れちゃったの」
「ママ……」
言わないで……
「いずれあたしは引退する。サラ。そのつもりでいて」
この話はもう終わりという感じでママは飲み干したコーヒーカップを持ってカウンターの中へ入っていった。