銀座のホステスには、秘密がある
アタシがママだなんて、そんなことできる訳ないじゃない。

力不足っていうのもあるけど、
女じゃないし……

銀座の老舗。
有名なクラブ
そこのママが女じゃないなんてあり得ない。
……って、言われるに決まってる。
それこそ、これまで先代たちが築いてきたモンテカルロの信用が台無し。

「絶対バレる訳にいかないじゃない」

アタシが女じゃないって誰にも知られちゃダメだ。
今よりもっと気をつけないと……

「……って、アタシはママになりたいの?」

憧れないかと言えば嘘になる。
一番輝いてて、全てのテーブルに挨拶回りして、多くのお得意様を抱えてて、
噂ではハリウッド俳優のホームパーティーにも呼ばれたとか。
考えないかと言うと……
そうでもない。
やっぱりこういうお仕事をしていたら、先の先の目標は自分のお店を持つこと。
でも、そんなのみんなが持てる訳ないってのは良く知っている。

モンテカルロの4代目。

「……」

うん。
明日から、毎朝のルーティンに英会話を加えよう。

「英語はさ、ママになるんじゃなくても、できる方がいいもんね」

普段は考えないようにしてるけど、こんな時将来のことをちょっと考えてみたりする。
自分の将来、何も思い浮かばない……

「はぁ。ママか……」

今日着ていくドレスを選んでる時に、ふと気が付いた。

「あっ。彩乃さんのこと言い忘れてた」
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