銀座のホステスには、秘密がある
目の前を歩いてるのは、
「ねぇ、たっちゃーん」
グリッターの女と、
「そんなにくっついたら歩きづらいだろ」
女に腕を組ませてる殿。

全身から力が抜けていく。
目の前の二人は仲良さそうで……
じゃ、殿は同伴からアフターまであの女と一緒だったっていうの?
そんなに長い時間?お店に?

そんな訳ない。
でも、もし二人が付き合ってたら?
ううん、仕事だよ。接待だよ。
でも、最初から最後までお店にいるなんてないよ。

頭の中で天使と悪魔が戦ってるみたい。

そう言えば彼女も背が低いし、キレイって言うより可愛いって方の顔立ち。

「サラさん?」

首がギギって音を立てたんじゃないかってくらい無理して横を見ると、不思議そうな顔の彩乃さん。
彩乃さんは気が付いてないの?
なら、二人のことは見せない方がいい。
知らないでいいことは、知らない方がいい。
だって、彩乃さんも殿のことが……

「ねぇ、彩乃さん」
「はい」
「彩乃さん。好きな人がいるでしょう?」
「え?な、ど、どうしてですか?」
そう答えた彩乃さんの顔が引き攣っている。
それだけでいるって言ってるようなものだよ。

「アタシが協力してあげる」
「え?」
「大丈夫。誰にも言わないから」
「サラさん?」
「アタシに任せて」
「ちがっ。サラさん!」

後ろで彩乃さんが何か言ってるけど、もうアタシは走りだした。
あんな娘、殿には似合わない。
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