銀座のホステスには、秘密がある
トパーズ色の空間。
あちこちで聞こえる笑い声。
そして、賞賛の視線。

今日のアタシはエメラルドグリーンのドレス。
一番のお気に入り。

目の前のシャンパングラスを優雅に持つ手には控えめなネイル。
膝の上には真っ白いハンカチ。

「サラは眼鏡も似合いそうだな」
「じゃ、木戸様の眼鏡をお借りしても?」
「いや。俺のは度が強いからやめた方がいいって」

アタシの隣りには殿の接待のお相手。

「木戸さん、それ伊達眼鏡じゃないんですか?」
「すごいお似合いです」

アタシの前には殿と彩乃が肩を並べて座っている。

これはアタシが作りだした光景。
こうなることを望んだのは、アタシ。

殿と彩乃が同じところで笑う。
時々「彩乃」って殿の声が聞える。

アタシはそれを微笑んで見てる。

「サラは休みの日は何をしてるの?」
「休みの日は~読書ですね。木戸様は?」
「俺は、まぁ休み自体があまりないけど、あったらドライブに行くな」
「木戸さん、どんな車に乗ってるんですか?」

今日も殿は頑張って木戸さんを盛り上げようとしている。

「上杉ちゃんの方が良い車に乗ってんじゃないの?」
「いえいえ。俺は、車は持ってないっすよ」
「じゃ。休みの日ってどうしてるの?」
「そうですね。休みの日も仕事してますね」

あはは……、同時に笑う殿と木戸様。

「上杉ちゃんは仕事が好きだなぁ」
「やらないと気が済まない性分で」
「休んでたら置いていかれるって思うんだろ?あー、俺もそんな時期あったわ」
「木戸さんもあったんですか?」
「あぁ、もちろん。あれだよな。本当にゆっくりとした時間を家で過ごせたら、それが一番の贅沢なのかもな」
「そうですね。こたつにみかんとか。仲間たちと鍋なんかつついちゃったりするのいいなぁって思いますね」
「上杉ちゃん。そこは彼女とって言わなきゃ。ねぇ、サラ」
「うふふ……そうですよねー」

そうで、すよ、ね。

今、何か大事そうなことを言ってなかった?
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