銀座のホステスには、秘密がある
こたつ、みかん……
鍋……

「それだ!」
「うわっ。びっくしたどうした?サラ」
「え?ううん。なんでもないです」

いけない、仕事中だった。
全然大丈夫ですって顔して、木戸様の水割りを作る。

殿を彩乃の家にご招待して、鍋パーティーとかどうだろう。
家庭的な雰囲気で殿を落とす作戦。

うん。いいかもしれない。

鍋に、みかん。熱燗とかも用意して、
おつまみも少し、
全部手作りして、
問題は何鍋にするかよね。

「どうした?何か悩んでる?」
木戸様がアタシの顔を覗きこむから、
「え?ううん。鍋って言ったら何鍋が普通なのかなって」
つい考えてたことが口から出てしまった。

「おまえまだそこで止まってたの?」
殿が笑ってる。
やっぱり鍋好きなんだ。

「そうだな。普通の寄せ鍋もいいけど、もつ鍋とか好きだな」
「さすが木戸さん。俺ももつ鍋好きですね」
「あぁ。そんな話してたら腹減ってきたな」
「そうですね。なんかあったかい物食いに行きますか?」
「そうだな。ラーメンとかどうだ」
「いいですね。君たちもどう?」

話はトントン拍子にアフターの話にまでなってる。

「私たちはまだもう少し……」

やだ。彩乃さん何で断ってるのよ。

「ご一緒させていただきます」
「サラさん?」
「少しくらい早く帰らせてもらっても大丈夫よ」
「でも……」
「大丈夫。アタシに任せて。木戸様、上杉様、ちょっと失礼いたします」

ゴンちゃんに早く帰りたいって言ったら、イヤな顔されたけど、せっかく殿に誘ってもらったんだから、行かなきゃって使命感みたいなものまで湧いてくる。

その後の移動もお店の中でも、アタシは木戸様にずっとくっついてて、
殿と彩乃をほぼ二人っきりにしてた。

もしかしたら作戦なんかいらなかったかも
なんて思ってたのに……
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