銀座のホステスには、秘密がある
翌日、お店には遅くなるって伝えて、新宿駅で姉ちゃんを待った。

男物の服も買って着替えてみた。
メイクもしてない顔で表を歩くのは勇気がいる。

みんなが見てるような気がするけど、いつもと違って逃げたくなる。

長い髪は束ねて、キャップの中に隠した。
サングラスをかけて、
歩き方にも気をつけて、
男を演じてみる。

不安だったけど、意外と上手く男に化けられた。
化けられたって言うのも変かもしれない。
一応18歳までは男だったんだから。

座り方も歩き方も、男だった頃を一つ一つ思いだして、再現してみる。

でも……
これまで一生懸命積み上げてきたものを自分自身で壊していってるみたいで、悲しくもなる。


「晶!」
新宿駅に降り立った姉ちゃんは、あの頃のまま女王の威厳を放っていて、

「東京来るの久しぶりだったから、緊張しちゃってー。晶、良い男になってんじゃん」
「荷物持つよ」
「当然じゃない。あー、重たかったー」
ちょっとおばさんになってた。

「あのさ、姉ちゃん。オ、レさ。彼女と同棲してて……」
「そうなの?紹介してくれる?」
「あ、いや。彼女は今日は仕事で……」
「ふーん。残念ね」
「だからさ、部屋がさ……」
「分かった。あんまり漁るなってことね?」
「あ、うん。まぁ、そうね」

なんとか第一関門突破だ。。
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