銀座のホステスには、秘密がある
新宿駅までサラとして見送りに行った。

「なんか妹ができたみたい」
姉ちゃんが照れながら言うから、
「妹にしてよ」
アタシまで恥ずかしいセリフを口にした。

今まで隠したり、演じたり、家族にも本当のことは言えないでずっと生きてきたから、
姉ちゃんの前に女として立ててる今が、すっごく不思議な気がする。

でも、悪くない。

もう姉ちゃんには隠さなくていいんだ。

「でも、まだ、お母さんたちには言えない」
特に、お父さんが知ったら、なんて言いだすか……

「分かった。誰にも言わない。だから、時々は電話に出なさいよ」
「うん……」

「ねぇ。晶が働くお店はあたしも行けそうなとこ?」
「うーん。高いよ」
「そうなんだ」
「接待とかで使う人が多いの」
「ふーん。なんて名前?」
「言っても分かんないでしょ?」
「いつか働く晶を見てみたい」
「……晶じゃないってば。サラ。クラブ モンテカルロのサラよ」

姉ちゃんは電車に乗ってからもアタシのことをジッと見てた。

一人で生きてるって思ってた。
誰にも頼らないでやっていけてると思ってたのに、
心配してくれる人がいる。
それだけで冷たい風も気にならなくなる。

アタシは一人じゃない。
そう思える。
< 92 / 222 >

この作品をシェア

pagetop