銀座のホステスには、秘密がある
「近くの駅に着いた」
っていう殿からの電話だった。

「本当に行っていいの?」
って、今更確認してる殿に笑ってしまった。

「はい。もちろんです。彩乃さんが迎えに行きますね」
「緊張するなぁ。ドレスコードは?」
「もう。殿ったら。今日はゆっくりくつろいでください」

無理にはしゃいで盛り上げようとするのが、もう癖になってるっぽい。
うちに来るときぐらいはそんなのいいのに。

殿にも、彩乃にも、喜んでもらいたい。
アタシは良い人たちに囲まれてる。って考えたら、少し泣きそうになった。

「じゃ、サラさん。行ってきますね」
「うん。お願い」

さぁ。作戦開始だ。

彩乃を迎えに行かせて、アタシは最終確認。

お鍋に火を入れて、姉ちゃんが買ってきてくれてたモツを下茹でして、
ビールや熱燗の準備も大丈夫だし、こたつの上にはミカンまで用意した。

殿のために用意した物たち。
殿がアタシの部屋に来る。

なんだかジッとしてられない。
落ち着けアタシ。
これだけ準備したのに、何か足りないような気がして、一々指さし確認してた。

そして……

ピンポーン

殿がやってきた。
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