銀座のホステスには、秘密がある

「じゃ、行ってくるわね」

コートを羽織って、お財布を持った。
一泊する準備だってもうしてある。
アタシのお手入れセットと着替えが入ったバッグは、既に駅前のビジネスホテルに預けてある。
完璧な計画なのよ。

「ダメです」
「彩乃！」
「行くのは私なんです」
「どうしたの？怖くなったの？」
「違います……最初から、こうするつもりでした」
「どうして？アタシが行かなきゃ……」
「だましてごめんなさい！」

「え？」

アタシに頭を下げてる彩乃。
咄嗟に殿の方を見たら、しっかり目が合った。
殿にバレた。

「あ、彩乃……」
「サラさんが……サラさんの好きな人が上杉様だってことは、ずっと前から気付いてました」
「な、なに、言ってんの」
「それでもいいって思ってたんです。サラさんを応援していくつもりでした」
「違うでしょ？だって殿は彩乃のことが……」
「でも、サラさんに、家に誘われて……いけないって思ったんですけど、サラさんの家を見たくて……この計画に加わりました」
「え？」
「サラさんと、二人で……今日、とっても楽しかったんで……私、幸せでした」
「ちょっと待って、何の話？」
「サラさん。ここで消えるのは私です」

強い瞳でアタシに宣言した彩乃は、そのままこたつの方へ向かった。

「上杉様。すみませんでした」
殿の横に座って頭を下げてる彩乃。

「違うの。ちょっと待って」
慌ててその隣に座って彩乃を止めた。

「彩乃。アタシのことは気にしないでいいの。アタシが二人を応援したいって言いだしたのよ。彩乃が謝ることないじゃない。
殿。この作戦は全部アタシが考えたの。だから、彩乃は悪くなくて……」

アタシが殿に向き直ったら、殿は笑っていた。

「サラ……分かってやれよ」
「え？」

「彩乃は、サラが好きなんだろ？」