禁忌の泪
音
あたしには常々降りてみたい駅があった。
香夜駅という、文学の香りのする名前で、降りるべき駅から八つ離れている。
ただ、学区外になるので、見つかれば何らかの処分を受けなくてはいけないかもしれない。
学区外に出るのは学校の許可が必要だという堅苦しい季節を引きずっているのだ。
家が一つ一つと少なくなってきて、目に優しい光景にあたしは盛大にあくびをする。
そのうち、うとうととしてしまい、ふと気付けば、「香夜駅」のアナウンスが耳元で聞こえる。
かぱんを引っ掴んで、慌てて降りるあたし。
半分寝ぼけて、さっと覆う影にも気付かず。
どっ。
あたしは正面から乗ろうとした人に思い切りぶつかってしまった。
勢いがついていたからか、その人はそのまま、背中から地面に倒れ込み、拍子にあたしはかぱんを取られ、覆いかぶさってしまった。
そして、その人が尻餅をついた時、聞こえた小さな音。
その音が全ての始まりだった。
香夜駅という、文学の香りのする名前で、降りるべき駅から八つ離れている。
ただ、学区外になるので、見つかれば何らかの処分を受けなくてはいけないかもしれない。
学区外に出るのは学校の許可が必要だという堅苦しい季節を引きずっているのだ。
家が一つ一つと少なくなってきて、目に優しい光景にあたしは盛大にあくびをする。
そのうち、うとうととしてしまい、ふと気付けば、「香夜駅」のアナウンスが耳元で聞こえる。
かぱんを引っ掴んで、慌てて降りるあたし。
半分寝ぼけて、さっと覆う影にも気付かず。
どっ。
あたしは正面から乗ろうとした人に思い切りぶつかってしまった。
勢いがついていたからか、その人はそのまま、背中から地面に倒れ込み、拍子にあたしはかぱんを取られ、覆いかぶさってしまった。
そして、その人が尻餅をついた時、聞こえた小さな音。
その音が全ての始まりだった。