禁忌の泪
桔梗
駅から畔道をとぼとぼ歩いて5分。
見慣れた看板のドーナツチェーン店の中に入る。
店はがらんとしていて、店員が談笑していた。
彼はトングでクリームがタップリつまったカスタードパイを取り、あたしを見る。
あたしは、首を横に振り、レジに行って、アイスティーを注文した。
財布を出して、小銭を出そうとしたあたしに、「一緒で」と声がかかる。
よく聞けば、落ち着いた通りのよい声だった。
レジの前でもたもたするのもみっともないので、あたしは彼のトレーに自分のアイスティーを乗せて、禁煙席の隅っこの一番目立たない席についた。
「ここでいいですか?」「ああ」
彼が座ってからあたしも座る。
握り締めたままの小銭を差し出したら、また睨まれた。
何故か怒られて、奢られている。
からん、とアイスティーの氷が揺れた。
「あんた、学校は? それ春が丘高校の制服だろ?」
「さぼりました」
素直に答えたあたしをジロジロ無遠慮に見つめる瞳。
「意外だな」
カチンときた。
「お前のように校則命みたいな今時黒縁メガネに、三つ編み、膝丈スカートのダサい格好貫いて、年中眉間にシワ寄せて、ガリ勉タイプのつまんなそうな女は学校に真面目に通うのが当たり前ですか?」
思わず語気を荒くしたあたしに、彼は一瞬キョトンとした表情を浮かべて、笑い始めた。
机をバンバン叩いて、かなり失礼な態度だ。
「……よってるよ、眉間にシワ。あんた想像力豊かだね。俺はそこまで言ってもないし、思ってもいない」
ぐっと言葉につまるあたし。
「第一、あんたの名前も知らないんだぜ?」
そういえば、そうだ。
「俺は、桔梗サクヤ」
「あたしは、橘史音です」
見慣れた看板のドーナツチェーン店の中に入る。
店はがらんとしていて、店員が談笑していた。
彼はトングでクリームがタップリつまったカスタードパイを取り、あたしを見る。
あたしは、首を横に振り、レジに行って、アイスティーを注文した。
財布を出して、小銭を出そうとしたあたしに、「一緒で」と声がかかる。
よく聞けば、落ち着いた通りのよい声だった。
レジの前でもたもたするのもみっともないので、あたしは彼のトレーに自分のアイスティーを乗せて、禁煙席の隅っこの一番目立たない席についた。
「ここでいいですか?」「ああ」
彼が座ってからあたしも座る。
握り締めたままの小銭を差し出したら、また睨まれた。
何故か怒られて、奢られている。
からん、とアイスティーの氷が揺れた。
「あんた、学校は? それ春が丘高校の制服だろ?」
「さぼりました」
素直に答えたあたしをジロジロ無遠慮に見つめる瞳。
「意外だな」
カチンときた。
「お前のように校則命みたいな今時黒縁メガネに、三つ編み、膝丈スカートのダサい格好貫いて、年中眉間にシワ寄せて、ガリ勉タイプのつまんなそうな女は学校に真面目に通うのが当たり前ですか?」
思わず語気を荒くしたあたしに、彼は一瞬キョトンとした表情を浮かべて、笑い始めた。
机をバンバン叩いて、かなり失礼な態度だ。
「……よってるよ、眉間にシワ。あんた想像力豊かだね。俺はそこまで言ってもないし、思ってもいない」
ぐっと言葉につまるあたし。
「第一、あんたの名前も知らないんだぜ?」
そういえば、そうだ。
「俺は、桔梗サクヤ」
「あたしは、橘史音です」