スマイル 〜約束した君へ〜
そうちゃんとの約束が果たせなくなったのは、退院してすぐに、パパとママがリコンしたから。

私はママに連れて行かれることになり、住んでた町とは全く別の、遠く離れた場所で暮らすことになった。

中学に入り、ママがクラブの経営を始めてから、元住んでた町に戻ってきた。
でも、時は経ちすぎてて、そうちゃんとのことは、遠い思い出になりつつあった。

そんな入学式の日、掲示板で見つけた河口君の名前。
忘れかけてた人の名前に似てて、思わず本人かと思ってしまった。


『字も似てるみたいよ』

ママが言ったのは、河口という苗字の方。
名前までは、もちろん覚えてなかった。


名前も年もうろ覚えだったのも仕方ない。
10年前、ほんの短期間触れ合っただけの人。
でも、そうちゃんとのことは、この10年間の中で一番いい思い出。
だからこそ、ゼッタイに忘れたりしなかった。


『また会おうね…』


初恋の人との再会の約束は、いつも甘い夢を見せてくれた。
だから、今日聞いた真実は、すぐには実感できない部分もあった。

そうちゃんが死んでしまったということと、河口君が弟だっていうこと。

その二つは何とかホントの事かもしれないと思える。
でも、あの場所へ来たのが、「そうま」君でなく「そうや」君だとしたら、彼は何故、私に会いに来たんだろう。

入院着まで着て、さも「そうちゃん」を装って……。




ーーー 河口君が去った後、体育館に戻った。
練習はまだ続いてて、まりんちゃんは戻ってこないカレシを心配してた。
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