スマイル 〜約束した君へ〜
「ハルナ、ソウヤ見なかった?」


声をかけられドキッとした。
ついさっきまで一緒にいたとは話せない。


「…知らないよ。見なかった」


目をゴシゴシする私を、まりんちゃんは不思議そうにしてたけど…。


「そっかー、どうしたんだろう…」


一緒に帰る約束をしてたのかもしれない。
河口君はそれすらも放ったらかして、家に帰ってしまったんだ。


「…あっ!ハルナちゃん、どうしたのその顔!」


穂波センパイが近寄ってきた。


「頬っぺた赤いよ!誰かに叩かれたみたい。イジメられたの⁉︎ 」
「い、いえっ!違います!さっき外へ行った時、ヨロけて壁にぶつかって…」


口が裂けても河口君に打たれたとは言えない。
言えば、あれこれ聞かれるから。


「あっぶな〜。気をつけないと…」


優しく撫でてくれる。
お姉ちゃんみたいに優しくしてくれるセンパイ。
河口君の気持ちも知らないで、ダイゴ君と付き合うことにした人。

そのおかげで、まりんちゃんが彼から傷つけられることになる。
だって、河口君が好きなのは先輩だもん。
あの人はずっと、センパイのことを目で追ってたもん。


「んっ?何?」


天然そうな顔して首をかしげる。
センパイとダイゴ君、ステキなカップルだと思うけど、私は素直に祝福できない。


「いえ…何も…」


自分のラケット持って、素振りやサーブの練習始める。
中学の時と同じように、シャトル拾い3年間というのだけは避けたいから。

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