スマイル 〜約束した君へ〜
(メンドくせーな…)


やりたくねぇのはお互い様。でも、このままだと怒られるのはオレ達だ。

「…立たねぇの?」


一応、声はかけた。
モットーは実践しろ…の言葉通り。


「入学式始まるよ⁉︎ 」


ダイゴも合わせる。


「あ…は、はい…」

真っ赤な顔して上がった。


(…ゆでダコだな…まるで…)


デコまで赤くなったヤツの顔なんか見たことねぇからおもしれー。


「出ようぜ!」


悟られないように歩き出す。その後ろをついて来るオンナ。
そのオンナの後ろを歩くダイゴが、気軽に話しかける。


「…名前、なんてーの?」

「き…きのした…はるな…です…」

「ハルナちゃんか…カワイイ名前だなぁ…」


おべっか使いのダイゴが言う。

(こいつはまた…すぐにいい顔見せるから…)

「オレの名前は『楠瀬大吾』、前にいるヤツが『河口蒼弥』、オレ達ここの風見鶏だから、分からないことあったら聞けよ!」

「『風見鶏』…?」

不思議そうに聞き返す。
一瞬、間を空けてダイゴが説明した。

「小学部から通ってる生徒のこと。何でも知ってるから『風見鶏』って呼ばれてるんだ」

「へぇー。面白い…」


感心してら。


(単純なヤツ…)


ちらりと後ろを振り返る。
見上げてるヤツと目が合う。

(ヤバッ…!)

ギクッとするオレにスマイル。

(な…なんだ…⁉︎)

勘づかれたか…と少し焦る。
でも、そうじゃないみたいだ。


「河口君…と楠瀬君…。ヨロシクお願いします」

引きつりながら笑った。小さな肩が震えてる。


(キンチョーしてんのか…)


見た所、同じクラスに知り合いはいねぇみたいだ。

(…だったらムリねぇか)

緒方さんが頼むと言ってたイミが分かる。
大半が顔見知りの中で、数少ない『他所者』。
コイツがクラスに馴染むには、相当の時間がかかりそうだ。
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